actor:クラピカ ページ14
生ぬるい風のようなものが、駆け抜けていった気がした。
それに警戒心を掻き立てられていなければ、クラピカは飛来したトランプに切り裂かれて死んでいただろう。
結果的にクラピカは生き残った。受験生たちが血を噴いて倒れていくのをなす術なく見守り、プライドを捨てて脱兎のごとく逃げて、レオリオの怒号に躊躇することしばし、ゴンの名前に弾かれたように駆け戻った。
その頃には全てが終わっていて、クラピカはただ、へたりこむゴンと散乱する死体だけを目にした。
ゴンの動物的な五感に頼って二次試験会場までを駆け、ヒソカが指す先にレオリオを見つけて安堵した――ちょっと傷がついていたが、まあそんなものは些細なことだ。
とにかく、本当にクラピカは安堵したのだ――
――キルアが声をかけてくるまでは。
「よ。よく戻ってきたな。ヒソカとかあの女に何かされなかったか?」
「あの女って?」
「あいつだよ」
ゴンの問いにキルアは目で一方を示した。
その先で手を振った、銀の癖毛に青い瞳の女――
「Aのこと? なんで?」
「なんでってお前……ヒソカと一緒にいただろ」
「え? いなかったよ! ねえクラピカ?」
「ああ……ヒソカ一人だったが」
「んなわけねーじゃん!」
キルアは苛立ったように叫んで頬を膨らませた。
「レオリオ抱えてきたのあいつだぞ!」
「わたしがどうかした?」
ぎゃあ、とクラピカも含め四人は揃って叫んだ。
「け、気配を消して近寄ってくるのはやめてもらえないだろうか」
「そう? ごめんごめん」
内心の動揺を努めて圧し殺してクラピカは苦言を呈した。Aは気にした風もなく、癖毛を揺らしてからからと笑う。
「で、わたしがレオリオを連れてきたって? そうだよ、頼まれたんだもの」
「頼まれた? ヒソカにか」
「そう」
「仲良しなんだね!」
「……」
無邪気なゴンの言葉はAに刺さったようだった。
「うん……否定できない……けど、あれと仲良しかぁ……なりたくなかったな……」
本気のぼやきに笑うゴンとレオリオ、釣られてクラピカも微笑みかけて――キルアの表情に笑みを消さざるを得なかった。
豹が獲物を狙うような、それか仇敵を睨むような、そんな顔を、少年は女に向けていた。
正午。
ハンター試験、第二次試験が始まる――
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海野(プロフ) - sakuさん» そのとおりですね。指摘ありがとうございます、記述を訂正しました。 (2019年4月9日 8時) (レス) id: 542ac62a81 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - すみません。ページ12で『白日の詐欺師』にも隠は効くっていうの、そもそもの能力発動条件をクリア出来てないんじゃないでしょうか?纏以外使えないという条件でしたよね?間違ってたらすみません! (2019年4月7日 12時) (レス) id: 7af2b9ccfb (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - sakuさん» コメントありがとうございます。心外ピエロの作者と個人的に交流があるのですが、sakuさんがどちらにもコメントをくださっていてびっくりだねという話をちょうどしておりました。いいですよね。続編も続けられるよう頑張ります! (2019年2月3日 8時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - 心外ピエロ私もよんでるんですが…いいですよね!あと、更新お疲れ様です。相変わらずとても面白かったです。 (2019年2月2日 22時) (レス) id: ee214ae639 (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - 操菜 荘椏さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年2月2日 19時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海野 | 作成日時:2019年1月16日 13時