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ヒソカ=モロウは快楽殺人鬼だ。
Aもたぶん、他人から見れば同じように見えるだろう。
上機嫌に受験生たちを弄ぶヒソカを、彼女は姿を消したまま眺めていた。
「二次試験くらいまでは大人しくしてようかとも思ったけど、一次試験があまりにタルいんでさ♠ 選考作業を手伝ってやろうかと思ってね♣」
ヒソカは愉しげに受験生を――彼言うところの「不合格者」を蹂躙する。
彼の快楽は殺人に直結している。
人と戦うことが愉しい。殺人に興奮する。相手が強者ならもっと気持ちいい。
ヒソカの全ては殺人と戦闘を中心にして回っている。こと戦闘にかけてだけ天才的な頭脳を発揮する男が、いつも驚異的な策略を巡らせているように見えるのは、単に彼が常に殺人を想っているからにすぎない。
ヒソカはどうしようもないほどの変態だが、もしその変態性を取り上げたら恐ろしくつまらないものになるのだろうな、とAは思う。
おおむね同類だから、Aにはヒソカのことがよくわかる。
ヒソカは高らかに嗤う。その狂気に何人かが踵を返す。
「うん、逃げを打てるのは賢明な証拠だ♦ でも何せ遅すぎるなァ……イタチ、あげるよ♥」
有り難く貰った。
一度の跳躍で三人の喉をかっ捌く。それらを踏み台にしてもうひと跳ね、最後の一人の背骨を蹴り砕きながらその上に着地。
残っているのはクラピカ、レオリオ、あと名前の知らない男。
ここまでヒソカが見逃しているということはある程度見込みがあるということだから、Aはあまり心配しなかった。お眼鏡に敵わなかったら一瞬逃げる隙くらいは作ってやろうかと思う。
Aも殺人が好きだ。それは否定しないが、ヒソカと纏めて一緒にされるのは気に食わない。
ヒソカ=モロウが「人を殺している」という過程を嗜好するサイコキラーなら。
A=ゾルディックは「人を殺した」という結果に執着するシリアルキラーだ。
彼女にとって相手の強さは関係ない。むしろ苦戦したり怪我をしたりするくらいなら、ごく弱い相手で構わない。
殺戮に酔いしれることも、血臭に恍惚とすることもない。あるのはただ安心だけだ。
人を殺した、というそのときだけ、Aは自分に価値を認めることができる。生きていてよいのだ、と思うことができる。
A=ゾルディックは――イタチは、そのために生まれた生き物だからだ。
ヒソカ=モロウは快楽殺人鬼だ。
Aも実は、彼とは似て非なる殺人鬼である。
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海野(プロフ) - sakuさん» そのとおりですね。指摘ありがとうございます、記述を訂正しました。 (2019年4月9日 8時) (レス) id: 542ac62a81 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - すみません。ページ12で『白日の詐欺師』にも隠は効くっていうの、そもそもの能力発動条件をクリア出来てないんじゃないでしょうか?纏以外使えないという条件でしたよね?間違ってたらすみません! (2019年4月7日 12時) (レス) id: 7af2b9ccfb (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - sakuさん» コメントありがとうございます。心外ピエロの作者と個人的に交流があるのですが、sakuさんがどちらにもコメントをくださっていてびっくりだねという話をちょうどしておりました。いいですよね。続編も続けられるよう頑張ります! (2019年2月3日 8時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
saku(プロフ) - 心外ピエロ私もよんでるんですが…いいですよね!あと、更新お疲れ様です。相変わらずとても面白かったです。 (2019年2月2日 22時) (レス) id: ee214ae639 (このIDを非表示/違反報告)
海野(プロフ) - 操菜 荘椏さん» コメントありがとうございます。これからも頑張ります。 (2019年2月2日 19時) (レス) id: 2600401e00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海野 | 作成日時:2019年1月16日 13時