食べ物への執着 ページ10
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ーーそれから、十数分後。
「ん〜、この小倉アイスってのも中々イケるね」
「ねえ、まだ食べるの!?さっきからお金も全部私が出てるし!!財布は!?」
「旅館に忘れた」
「…GATTEMU!!!」
何故か横文字で叫んでしまったけれど、許して頂きたい。何故って、この数十分で神威が食べた物はといえば。
たい焼き、かき氷、金平糖(袋丸ごと)、そしてさっきの小倉アイスである。それを、紫色の傘の下、常人の何倍もの量を涼しい顔で食べるのである。
……計すれば、とんでもない額だ。
絶対に後で請求してやる。
そう心に決めて、また別の食べ物目掛けて歩き始めた神威の後を追おうとした……のだけれど。
「……っわ!!」
慣れない着物のせいで、足を地に引っ掛け思い切り前につんのめってしまった。身体が前に傾き、転ぶーーと思った時。
「…っと、危ないな。ドジっ子みたいな事しないでよ」
「!」
ぐいっと手を引かれ、何とか踏み止まることが出来た。神威の言葉に顔を上げると、奴は平然とした顔で見下ろしていた。
それから、腕を掴んでいた手がするすると下に降りて、掌を握り、そのまま歩き出す。
「…え、ちょっと…!何!?」
だってこれはつまり、手を繋いで歩いてるという事だ。そんな恋人らしい事、神威がタダでするとは思えない。
「だって沢山食べたいのに、いちいち転ばれちゃ時間が勿体ないでしょ。嫌なら抱き抱えて歩くけど?」
「遠慮しとく」
恐ろしい食べ物への執着だ。…こういう事をサラっとしてくるものだから、此奴は本当に、心臓に悪い。
繋がれた掌が熱くて、それが神威に伝わっていないかどうかが、酷く心配だった。さっきまではよく見えていた京の町も、恥ずかしさと緊張で視界が狭まってしまって。
「(…本当、どうしてこんなのが好きなんだろう)」
一応形式的とはいえ、結婚した妻に全ての金額を払わせるような、私の中で一緒に過ごしたくない男ランキングナンバー3には確実に入るような性格なのに。
「(…それは、多分。神威がそれだけの奴じゃないからだろうけど)」
大食いも、確かに立派なアイデンティティだけれど、本質はそこじゃ無い。戦場を彷徨い、最強を求める獣。それが神威という男。
まあ、この問いに関しては、幾ら考えたって答えが出た事なんて、無かったけれど。
神威に手を引かれながら、私はぼんやりとそんな事ばかり考えていた。
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頑張ってください - ああああああああ久々に読んだら進んでてまた神威熱が… (2020年1月6日 1時) (レス) id: ac6d87c707 (このIDを非表示/違反報告)
自己満者 - 京篇凄い良くて、泣いちゃいました(笑)更新頑張って下さい! (2019年8月17日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - むくさん» コメントありがとうございます。時間をかけて丁寧に書いたシーンなのでそう言っていただけるととても光栄です!これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月26日 23時) (レス) id: 765bdcb728 (このIDを非表示/違反報告)
むく(プロフ) - 求婚シーンめっちゃ好きです〜!! (2019年5月25日 23時) (レス) id: 3bb4d6b7d5 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 匿名さん» 初めまして!そう言っていただけてとても嬉しいです。神威くんのイケメン台詞は割と心の声の方が潜んでいたりします笑これからもよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d60993068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2019年1月8日 17時