何時しかの日に ページ28
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突然笑い始めた総悟に、私は驚きを隠せない。
何も笑わせるようなことを言ったつもりは無いし、寧ろ怒るか、無言で斬りつけられるかだと思っていたから。
だけど、総悟のこんなに屈託のない笑顔は久し振りに見た気がする。ミツバさんが亡くなって、色々あって。
それからも笑う総悟は何度か目にしていたけれど、心から笑えているのは、中々無い気がした。
「……多少突っついたって揺らぎねェってか。面白ェ」
一頻り喉を鳴らしてまで笑っていた総悟は、ふと真顔に戻って小さく呟く。
それがどういう意図で放たれたものなのかを言及する前に、総悟は、また小さく笑みを浮かべて、私に向き直る。
「……言わねェよ。言う訳ねェだろィ。彼奴を殺れたとして、次に死ぬのは俺たちだぜィ」
「でも、それは……」
「それに、」
神威どうこうの話じゃないと言いかけて、総悟に遮られてしまう。その語調は強く、まだ言いたい事があるのだろう。
そう思った私は、大人しく口を閉じた。
「……それに、真選組に仇なしてるとか何とか言ってやがったが。てめェは上の命令に従ってるだけだろィ。罰する意味すらねェな」
そんな、総悟の言葉を聞いているうち。その言葉の中に、もう殺意は感じられない事に気が付いた。
初めは明らかに存在した神威への敵意が、消えている。
「この事実を知ってんのも、真選組じゃ俺だけ。何の心配も要らねェ」
その証拠に、総悟は最後まで笑顔だった。
そうして、徐ろに手を伸ばし、ゆっくりと私の頭の上に乗せる。そのまま、何度かぽんぽんと軽く撫でた。
総悟がこんなに優しく触れてきたのは初めての事で、自分の想いに区切りをつけて、私の意思を汲んでくれたのだと分かる。
長年私たちの間に在り続けた壁が無くなったようで、嬉しさが込み上げる。
「……総悟。ありがとう」
私の顔には、自然と笑顔が浮かんでいた。
「駄目だよ。此奴はもう、俺の奥さんなんだ」
そんな時、何時しかの日に聞いたような台詞が聞こえて。突然腕をぐいっと引っ張られ、バランスを崩す。
あっという間もなく、そのまま後ろに居た者に身体を預けることとなり。咄嗟に見上げると、見慣れた青が、私を見下ろしていた。
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頑張ってください - ああああああああ久々に読んだら進んでてまた神威熱が… (2020年1月6日 1時) (レス) id: ac6d87c707 (このIDを非表示/違反報告)
自己満者 - 京篇凄い良くて、泣いちゃいました(笑)更新頑張って下さい! (2019年8月17日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - むくさん» コメントありがとうございます。時間をかけて丁寧に書いたシーンなのでそう言っていただけるととても光栄です!これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月26日 23時) (レス) id: 765bdcb728 (このIDを非表示/違反報告)
むく(プロフ) - 求婚シーンめっちゃ好きです〜!! (2019年5月25日 23時) (レス) id: 3bb4d6b7d5 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 匿名さん» 初めまして!そう言っていただけてとても嬉しいです。神威くんのイケメン台詞は割と心の声の方が潜んでいたりします笑これからもよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d60993068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2019年1月8日 17時