決定打 ページ13
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サイドなし
「…ああ、クソッ、んでここもジャンプ売り切れてんだよ」
コンビニの自動扉から、その毛むくじゃらの頭を気だるげに、鬱陶しげに掻きながら出てきた男ーー坂田銀時。
お目当てのジャンプを手に入れる事が出来ず、苛立ちを覚えながら、彼は江戸の道をぶらぶらと歩く。
…ふと、その目に見慣れた栗毛が映る。その栗毛は、羽織を着込み、如何にも役人という雰囲気の男と話しているようだった。銀時の距離からは、会話はうっすらとしか聞こえない。
「…身の程を弁えておく事だな、田舎侍よ」
「ええ、分かっていやす」
何やら不機嫌そうな役人が大股で去って行き、残された沖田は、暫く何かを考え込んでいる様子だった。それに疑問を覚えた銀時は近づき、声を掛ける。
「…お前、総一郎くんだよな。何やってんの?頭なんか下げてよ」
普段役人とまともに話しているのを見かけない沖田の先程の様子が気になり、更に続ける。
「珍しく真面目な顔して話してたじゃねェか。何だったんだよ」
「…まァ、ちょっと。それより、旦那は知ってやすかィ?Aの結婚の事」
この時、沖田の中では、出会ったついでに教えてやろうと口にしたつもりだった。……けれど、彼の知らない所で事情を聞いている銀時は、そうは思わなかった。
「ん?もうそんな所まで調べてんの?流石、惚れた女の為なら仕事が早ェな、オイ」
ーーそう、だから。それが沖田の調査の決定打になるとも知らず、銀時は揶揄うような口調でそう言ったのだが。
当然今の沖田がそれを放置する筈もなく。
「旦那、俺ァAが結婚したっていう“事実”を知っているかを聞いただけですぜ。誰も、それに裏の事情があるだなんて聞いてやせん」
「………え、」
「折角の機会だ。教えてくれやすよね、旦那?」
チャキ、と沖田が刀に手を掛ける。申し訳程度にクエスチョンマークを付けてはいるが、元より拒否権を与えるつもりなど無いのだろう。
それを悟っているからか、銀時は多量の冷や汗を流しながら、コクリと頷いた。
「(……俺、どっちにしても死ぬな)」
彼の頭には、沖田には言うな、言えば切腹と念押ししていたAの顔が浮かんでいた。
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頑張ってください - ああああああああ久々に読んだら進んでてまた神威熱が… (2020年1月6日 1時) (レス) id: ac6d87c707 (このIDを非表示/違反報告)
自己満者 - 京篇凄い良くて、泣いちゃいました(笑)更新頑張って下さい! (2019年8月17日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - むくさん» コメントありがとうございます。時間をかけて丁寧に書いたシーンなのでそう言っていただけるととても光栄です!これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月26日 23時) (レス) id: 765bdcb728 (このIDを非表示/違反報告)
むく(プロフ) - 求婚シーンめっちゃ好きです〜!! (2019年5月25日 23時) (レス) id: 3bb4d6b7d5 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 匿名さん» 初めまして!そう言っていただけてとても嬉しいです。神威くんのイケメン台詞は割と心の声の方が潜んでいたりします笑これからもよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d60993068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2019年1月8日 17時