養ってください。【宮治】

46話 ページ46

side 治


早めに仕事が終わって、最近Aも摂取できてへんから、猫吸いならぬA吸いでもやろかと思って玄関の鍵を開けようとする。

…ん？開いとる。


無用心やなぁ、と思いながら玄関を開けると、そこから見えるリビングのソファーに見える見慣れた頭。

……ツム？

ツムを確認すると同時に、ツムの下におる奴…俺の彼女であるAが目に入る。

ツムの下にAがおって、ツムがそれに覆い被さっとる。
それを頭で理解した瞬間リビングの扉を勢いよく開け放ってツムの胸ぐらを掴んだ。


「ツム！お前何しとんねん！！」
「サム」


俺とは対照に静かなツムは俺の手を掴んで離させる。

お前ふざけてんちゃうぞ！と殴りかかろうとする俺を必死で止めるA。
なんでお前、こんな奴の味方すんねん。


「離せやA！！絶対殴ったる！」
「あかんて宮！」


カッとなって冷静な判断ができへんのも、考えるより先に体が動いてまうんも、全部Aやからやのに。なんでお前それがわからんねん。

俺とツムの間に入って喧嘩を止めようとするAの肩を掴んで退かせようとするけど、小柄な体に華奢な腕。どう扱ったらええんかわからんくて、とりあえずAのいう通り一旦クールダウンすることにした。


「あんたらほんまに人の話聞けへんねんやから…」
「これが狙いやけどな〜」
「…は？」


どういう事や、とAを見下ろすと、少し気まずそうな顔をしたあと、あんな、と語り始めた。

話によると、Aは俺がしたようにツムに恋愛相談をして、そろそろ帰ってくる時刻にある作戦を立てたらしい。
それが、浮気風に見せて嫉妬させよう作戦らしいねんけど、一つ言わせてもらいたい。


「…アホなん？」
「ぐうの音も出ない…」


面目ないです、と頭を下げるAを呆れた目で見つめていると、まぁかわええ彼女やんか、とツムに肩に手を置かれる。
俺がツムを睨むと、おぉ怖、と言ってわざとらしく肩をすくめた。

嫉妬させよう作戦やったとしても、俺は許せへんからな。大事なAに手ぇ出されて。

俺がAを抱き寄せると、お熱いなぁ、とニヤニヤしとった。


「でも宮も帰ってきてへんのに告白されたんはビックリしたわ〜。カッコよかったで、流石日本が誇るイケメンセッターの一人やな。顔だけは♡」
「なんでも形からやろ？Aも顔だけは美人やったで♡」
「おいお前ふざけんなよ」

何？Aに告白？は？

お前なにしとんねん！と何度目かわからん怒鳴り声をあげた。

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