養ってください。【宮治】

39話 ページ39

スナには泣きついてもーたけど、よくよく考えたらアタシらの問題やし。慰めてもろたけど。
とりあえず、アタシの決心がつくまで距離取らせてもらうわ。スナにもそう言われたし。

最低限の接触で抑えて、無駄話はなし。普段も出来るだけちゃう部屋で過ごす。


「起きや、宮。朝やで」
「ん…もう朝？」
「朝ごはん机の上やから、食べたら用意しーや。アタシはシャワー浴びてくるから」


そう言って朝のシャワーを浴びに行く。

宮に呼び止められた気ぃしたけど、きっと気のせいやろ。
しばらくシャワーを浴びていると、バタン…と玄関の閉まる音が聞こえた。

…もう、行ったんかな？

キュ、とお湯を止めると、ピチョン…ピチョン…とシャワーのヘッドから落ちる雫が足元に波紋を広げた。
こう、静かになると考えてまう。アタシと宮の関係について。

一応…付き合っとるんやし、お互い気持ちをぶつけてみるのも一つの手。
わかっとるんやで、アタシだって良い大人なんやし。

宮が、アタシのこと好きちゃうくても、アタシは宮のこと好きやねん。どうしようもないねん。


「忘れられるんやったら、忘れとるわ」


そう呟いた声が、浴室やからかよく響いて。
自分の声が頭によく響く。自分で自分の声を聞いて、理解しようと頭が働いた。

頭では理解できる。できる…ん、やけど…。

どうしても、理解してくれへんトコがある。

浴室の冷たいタイルの壁に頭を擦り付けて、ゆっくりと目を閉じてみる。
あかん、宮とおったら楽しいけど、やっぱ悲しなる。

あの子誰なん？とか、アタシのことどう思う？とか、女の子らしい質問できたら今頃こんなに悩んでへん。
でもな、アタシ…無理やねん、昔から一緒におるんやもん。今更あいつの前で可愛くなろうとか、ちょっと恥ずかしくて。

少し冷えてきた体を摩りながら、キュッと取っ手をひねって出したお湯で温める。

どんだけ体があったまっても、いつまでも…心は冷たいままやんか。
そう思って、小さくため息を吐いた。


あんな、宮。

聞きたいこといろいろあるで。

あの子誰？とか、アタシのこと好き？とか。
あぁ、あとは他愛無いことも知りたいねん。アタシの手料理やったらなにが一番好きとか、休日どう過ごしたいとか。

でもそれすら聞けへんのは、アタシが案外臆病やったからやな。ごめんな。


そしてアタシは、宮のことを忘れようとするみたいに家事に勤しんで、そのまま就寝した。

何度か宮に話しかけられたけど、全部手早く話を終わらせて長話はせんように気ぃつけた。
これで、忘れられへんかなぁ。

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