カラッポ【カラ松】

Twenty two episodes ページ25

「……おそ松？」
「好き、なんだよなぁ……」


独り言のように呟くと、ごめんな？と私を体から離す

私の事が、好き？




本当にそう言われたのか、と頭の中で問うが、答えは出てこない
国語の教師でもない、私は馬鹿な体育教員なのだ。言葉の意味を理解できる許容範囲を超えた


…おそ松が、私を好き…？




それでも私は好きじゃないから、と言おうとしたけど口を閉ざす


おそ松が悲しそうに笑っていたから


あぁ、おそ松はわかってるんだ
わかってて無謀な恋をしてるんだ



何も、言わない
何も、訊かない


それが昔からの、私たちのルール


「んじゃさっさと風邪治して学校来いよ〜」
「あっ……うん…」



呼び止めようと伸ばした腕をポトッとベッドの上に落とす
呼び止めちゃダメ
おそ松には、逃げ道を与えないといけない


私はカラ松が好きで、おそ松を好きになることなんてないんだ



「んじゃねー」
「……さよなら」



また明日？
明日の保証は、どこにあるの？


なんで好きになっちゃうの


「わかんないっ……わかんないよ、おそ松……」



ギュッと唇を噛むと、ジワッと目から涙が溢れた




「おはよう、おそ松。昨日はごめんね？」
「んあ？もうだいじょーぶなの？」


お礼のお菓子と、昨日のコートを返すためにおそ松の席に向かう
ポリポリと生徒から没収したポッキーを食すおそ松

先生としていいのか、と疑ってしまう



「洗濯しちゃったの？」
「ダメだった？」
「いや、別にいいんだけどな〜、と思って」



何それ、と苦笑する
隣の席が目に入った



……カラ松の、席



青い物が散乱しているのを見ると、焦って授業に行ったらしい


微笑ましい、と思う反面、会いたくないな、と思うところもある
それは、昨日のことがあったから？



「カラ松知らない？」
「え？授業じゃないの？」


おそ松が頭をかきながら聞いてくる
授業に行ってるんじゃ、と思ったがそうじゃないらしい



「…A探しに行って来てよ。次の時間暇でしょー？」
「なんでおそ松が私ら体育教員のスケジュール知ってんのよ……」


チョロちゃんに聞いたー、とドヤ顔してるおそ松は放っておいて、言われたことをしよう
カラ松なら、どこに行くか




真っ先に思いついたのは、屋上だった



普段鍵は閉まっているが、教員はいつも鍵を持ち歩いている




カチャ……



鍵を開けると、そこには青空が広がっていた



「綺麗……」
「あぁ、そうだな」


振り返ると、ニコニコと笑うカラ松がいた

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