弟の想い人に恋をしたはなし【不死川実弥】

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勤務時間の休憩中。
スマホを目の前にし、俺はため息をついた。



『もっと笑った顔が見たい』



先日、映画に誘った女と一緒に行った海で言われた一言を思い出す。首をちょこんと傾げて微笑むAに、気分はいつもよりなんとなく良かった。


それに対して答えた自分の言葉に、俺は感じざるを得なかった。まだ出会ってからそんなに月日を重ねてもいねぇし、会うと言っても片手で数えられる程度。たったそれだけなのに、こうも簡単に落ちてしまうものなのか。


……居心地が良い。

今まで生きてきた人生、こうも心の落ち着く女と出会ったのは初めてだった。付き合ってくれと言われ付き合った女は数人いたが、どれも長続きするような相手でもなく。気を許した相手に出会ったことがなかった。



「…………っあ"ァー……」



だらしなく背中を背もたれに預けて、警帽を深く被る。5つ離れた大学生、あくまでも弟の女友達。そう見てきていた、はずだった。


スマホの画面が照らされ、バイブ音が鳴り響く。
誰から来たのかわかりもしないのに、すぐに手に取ると送信者を確認した。



【Aさんから一件の新着メッセージ】



先日「てめぇが俺を笑わせろよ」と彼女に伝えた。自分なりに考えると言っていたが、俺を笑わせる方法でも見つけたのだろうか。



【実弥を笑わせる方法を私なりに考えました。なかなか思い浮かばななかったので、とりあえず会いませんか？】



丁寧に敬語を使用し綴られたメッセージに、「結局見つかってねぇのかよ」と送り返す。すぐについた既読。1分と待たないうちに彼女から返信がすぐにやってきた。


メッセージを確認した後、週末のスケジュールを確認した。



【でも、会えば笑ってくれるんでしょ？】



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あながち間違っていない。





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