第32話 ページ32
坂「…落ち着いて来たし、会議室行こか」
う「俺が連れてく」
そう言ってAを抱き抱える。
…………軽い。
『っ、…わた、る、くん……ごめん……』
う「っ………謝んなくて良い、謝らなきゃいけないのは俺の方だから。」
坂「うらさん、行こう」
ガチャッ
セ「っ、坂田、」
坂「すまん、緊急事態や。Aちゃん休憩させたいからそこのソファ使わせて。」
セ「分かった、すぐ荷物退けるわ」
いち早く反応したセンラがテキパキと動いてソファの上を片付けてくれるのが見える。
う「A、気分悪くないか?」
『…うん、ちょっと怠いだけ。吐き気はもうないよ。』
う「そっか」
ゆっくりとソファに寝かせてやると瞳を閉じたまま、Aが息を吐いた。
志「……あの、うらたさ」
う「志麻ちょっと廊下出ろ」
自分でも驚くほど低い声が出る。
セ「うらたん、」
う「センラは坂田と一緒にA見てて」
そのまま扉に向かって歩き始めると、志麻は黙って俺の後をついて来た。
志「……あの、うらたさん、すまん…俺…」
う「俺言ったよな?Aがどうして俺のところに来たのか。男が怖いことも、どんな目に遭って来たのかも、少しずつ頑張っていることも。」
志「…」
う「顔知らなかったじゃ済まねぇんだよ。Aの顔知らなくたって手元のファイルを確認することくらい出来んだろ。少し話聞くくらい出来んだろ。」
志「ホンマにごめん、」
う「何でっ、何でこんなことっ…!!!」
志「っ」
思わず目の前の志麻に掴みかかる。
だってそうだろう?
それ以外に、この怒りを沈める方法なんて、俺は知らないんだから。
う「お前、何で…っ!!!」
志「うらたさん、ごめん…」
う「謝る相手は俺じゃねぇだろーが!!!」
志「勿論…Aちゃんにも謝る…」
う「当たり前だ!!!……お前見てないだろ、Aがトイレに座り込んで苦しそうに泣いてる姿!!!…っ、おまえ、なんで……」
一生懸命外の世界に再び戻ろうと努力するAを側で見ながら、コイツだけは俺が守るんだ、ちっぽけな誓いを立てたんだ。
"渉くんの仲間でしょ?"
センラを家に泊める相談をした時、Aがそう言ってくれたこと、すげー嬉しかったんだぞ。俺の仲間を信じてくれてるんだって。
それを、よりにもよって、
う「お前がっ、…俺の仲間がっ!!!
……Aを傷つけるんじゃねーよ!!!!!」
1698人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まなつ(プロフ) - コメント失礼します。ただ一人の私自身を思ってくれる、本当の私を見てくれる、そんな優しい誰かがすぐそばにいる、それを気付かせてくれる誰かがいる夢主ちゃんはとても幸せですね。素敵なお話をありがとうございます (2020年6月25日 23時) (レス) id: c0717d53d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゲッティ - 奇遇、私も埼玉住んでる (2020年6月13日 18時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 心春さん» これは世界中で理不尽ないじめと戦う皆の話です。貴方の心に響いたのならきっと貴方も過去(現在かもしれませんが)経験がおありなのでしょう。「結局誰も助けてくれない、けれど何処かに助けてくれる大人は必ずいる」をテーマに書いておりますのでコメント嬉しいです。 (2020年5月26日 7時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
心春 - 泣いてしまいました。夢主ちゃんの周りに素敵な方達がたくさん居て、読んでいてとてもあたたかくなりました。これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます。 (2020年5月26日 0時) (レス) id: dd23ca9c81 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - しおさん» ありがとうございます。「貴方にとって優しい世界が何処かにある」をテーマに書いておりますので伝わっていたのはとても嬉しいです。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:凛 | 作成日時:2019年8月6日 12時