好物頂上決戦【月島 蛍】

そして月は辺りを照らす。 ページ47

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強さは、自由だ。

体力の限界を超えても、戦おうとする両者。



月島も、手を怪我してなお、

冷静に、慎重に。ボールだけを追いかけている。





「ワンタッチ！！」





一進一退の攻防が続く中、

この声に、どれだけ救われただろうか。






「(頑張れ、みんな…頑張れ、月島…ッ！)」






祈ることしかできないのは、とても辛いこと。


されど、コートから目を逸らしてはならない。









そして、その瞬間はあまりに劇的。


20-19。烏野リードでむかえた一球。


自らテンポを遅らせ、バックアタックからシンクロ攻撃に参加する日向。


の、スパイクがリベロの手を弾いて、



地面に、落ちた。







時が止まったようだった。


頭が咄嗟に反応しなかった。






どよめく体育館に、

コート内で喜ぶみんなに、




初めて勝ちを実感した。







「やっ…た！！やった！」

「すごいね…本当すごい！」

「仁花ちゃん、ボキャブラリー…ッ」

「(人1)ちゃんは涙目だよ〜…ッ」






試合を終えたみんなが応援席に駆け寄ってくる。


ありがとうございました、の声に仁花ちゃんと笑い泣きしながら拍手する。




ふと月島と目が合って、私は笑顔でピースを向ける。


月島は嫌そうな顔してたけど、撤収するときにこっそりピースを向けてくれた。



無表情で。








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「ノヤ先輩、凄かったです…！あのウシワカのスパイクを上げるなんて…」

「まあしょぼレシーブだけどな！月島のおかげでなんとかいけた感じだ！」

「あれでしょぼレシーブとか言うんですか…完璧なのに」



「おーい、山口と月島知らねえ？」






閉会式前、一階に降りてみんなと合流する。

潔子さんは泣いていた。美しい。







「…私、探してきます」

「多分トイレだと思うけどな〜。閉会式間に合うように戻って来いよ〜」




スガさんに言われて頷きながら走り出す。


何だか、無性に月島と話したい気分だった。






試合のことも、この感情も。









「あ、(人1)」

「山口くん。お疲れ様。月島は？」

「トイレ。しょげてたから説教してきた」

「…山口くん、度胸ついたね」






ふふ、と笑うと、山口くんも笑って、






「ツッキーに話あるんだよね？俺先戻ってるから、頑張ってね！」

「え、」

「(人1)ならツッキーを任せられるよ、大丈夫！」




じゃあね、と去っていった山口くん。






…と同時に、トイレのドアが開いて月島が姿を現した。

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