好物頂上決戦【月島 蛍】

指の怪我と保証。 ページ46

.




影山は体力を消耗しつつあったらしく、スガさんがスターティングになった。

そして、ここにきて調子を上げるウシワカ。マジでバケモノすぎる。



4-6と白鳥沢リードで向かえたウシワカのスパイク。

アウトだと思ってたら月島が触ってたらしい。




うぅ…と下唇を噛みながら月島を見たとき、

いつもと違う感じに思考が止まった。



タイムが取られて、潔子さんが月島の手にタオルを差し出す。まさか、


私は考えるより先に走り出した。

後ろから明光さんもついてきてくれた。









「月島！！」

「(人1)…と、兄ちゃん。何でいるんだよ…知ってたけど」

「弟の勇姿を見にきたに決まってるだろ」

「…ねえ、手、大丈夫なの？」

「まあ、大丈夫でしょ。五セットなんて疲れるだけだし、休めてよかったよ」





いつもみたいな調子で話すのに、顔はどこか歪んでいる。





「(悔しいんだ…)」







私はぎゅっと月島のユニフォームの裾を掴む。

大丈夫だから、






「月島が戻ってくるまでみんな待ってるし、それまで負けてるなんて絶対ないから！

私が保証する！」



月島の目を見て言う。

晒さずに、一つ一つを丁寧に。






「…保証されなくても、知ってるし」

「！」

「月島、急ごう」





月島は潔子さんに背を押され、救護室へ消えた。

明光さんも後から入っていった。








「(…あんな顔して知ってる、なんて言うんだもん。心配して損だったな)」


私は救護室の外で月島を待った。






.




ガチャリ、とドアが開いて小指と薬指にガチガチに包帯を巻いた月島が出てきた。






「つき、」

「試合は！」

「…まだ終わってない！14-14の同点！」

「っ、」






月島は小走りで体育館に向かう。

慌ててその後を追いかける私達。






「(まさか月島が、一刻も早くコートに戻りたがるなんて)」




私は心の中で笑いながら前を走るその背中を追いかけた。







「平気？」

「痛いけどなんとか。てか集中力切れるから話しかけないで」

「う、」

「…まあ、一応ありがと、」






月島は私の頭を軽く叩いてベンチに向かっていった。


安堵のため息をついて、観客席に戻る。









「おかえり、(人1)ちゃん！」

「仁花ちゃん、ごめんね急に…」

「全然！…月島くんへの想いめちゃくちゃ伝わりました…！」

「うわ恥ずかしぬ」







またコートに月島が戻ってきた。


私は祈るような眼差しで、月島を見つめた。

そして月は辺りを照らす。→←勝負の行方。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す