好物頂上決戦【月島 蛍】

救いの手に包まれて。 ページ32

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月島side







「……ハァ？」

「うわ顔放送事故みたくなってるよ月島。大丈夫？」

「いやお前こそ大丈夫？言葉の意味分かんないんだけど」

「え、そのまんまじゃん。私のヒーローになってよ」






2回言った。聞き間違いじゃなかった。

いや2回聞いても意味分からない。




そんな僕の様子に、亀野は月を見上げながら話す。







「…頑張れ、とか、期待してる、とか。そういうの重荷になるって人いるじゃん。

きっと、月島も嫌いかなあって思って。

まあ誰かのヒーローになるのも、重荷になるのかもしれないけどさ。


でも、兄ちゃんが果たせなかったからこそ、月島が果たすべきじゃない？



…幻覚じゃない、本物のヒーローに」





そよ、と風が吹いて、亀野の髪が揺らめく。


こちらを向いて僕を射抜くその瞳は、真剣そのもの。







「クサいセリフ…」

「うるさ。真面目に聞いてよね」

「じゃあ真面目に聞くけど、もし僕がヒーローになったとして。

みんながヒーローだって崇めて、なのにそれこそ僕の兄ちゃんの二の舞になったら？」


「二の舞になんてならないよ」

「どこにそんな自信があるワケ？」



「さあ。でも、私が保証するもん。誰に何と言われたって、責められたって、

私がいつまでも、月島はヒーローだって証明する」







スッと手が伸びてきて、優しく手を握られる。





嫌ではなかった。


優しいその手が、僕の救いであるかのように。








「エースになれって言ってるワケじゃないじゃん。ヒョロい月島にエースは無理だし」

「サラッと悪口ぶっ込むなバカ」

「月島もね！…だから、ブロックで誰にも負けないようになるの。


…それに、80点の合格点で喜ぶより、100点満点で『よっしゃ！！』って言う方が気持ちよくない？」








にこりと笑う亀野は、僕の重荷になる言葉は一つも言わない。


なのに、後押しされているような感覚。









「(ああムカつく…のに、この手を離したくない)」








絆されてしまった。
　

不意に落ちてくる、亀野抱くことはないと思ってた感情。





僕も案外単純だな、と心の中で笑う。









「…後は、ずっと側で月島を見ていた彼に任せるよ。

マネージャー如きが熱く語ってごめんね」






するりと手が離れる。


そんなことない、という言葉は言わせてもらえなかった。






だからせめて、



背を向けて歩く亀野に、小さく感謝を述べた。









「…ありがと」

たかが名前。→←単純な答え。

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