単純な答え。 ページ31
.
「あれ、大地さん、月島は?」
「今出てったばっかりだぞ」
「うそ!」
マネの仕事してたら遅くなったみたいで、月島は体育館にいなかった。
私は踵を返して通路を走った。
走って、走って。やっと見つけた。
このままで良いワケない。ちゃんと伝えなきゃ。
私は月島の手を掴んだ。
「ちょ…ビックリした、なに?」
「っ…話、聞いてほしくて…ごめ、息整うまで、待って…」
「……何の話?」
「…月島は、バレー、楽しい?」
3回目のこの質問。
月島もさすがに意味不明だと思ったのか、再び歩こうとする。
…の手を、もう一度ちゃんと掴む。
離したりなんかしない。
「なん、」
「月島は、今の自分がかっこいいと思ってる?」
「はぁ?」
「少なくとも今の時点じゃ全然かっこよくもないよ。日向や影山より、山口くんよりかっこ悪い」
その言葉に怒りを感じたのか、月島は眉間にシワを寄せた。
こわい、と思うけれど今は怯んでいる場合じゃない。頑張れ、私。
「本当は好きでしょ、バレーも、お兄さんも」
「…聞いたの」
「うん」
「あのバカ…」
ハァ、とため息をついた後、
冷酷な瞳が私を貫いた。
「…そうだよ。兄ちゃんは僕のヒーローだった。僕の全てだった…!
理想を、幻想を、勝手に兄ちゃんに抱いてた。
そしたらどうなった?僕が理想を押し付けたせいで、兄ちゃんはつきたくない嘘までついた!
僕を傷付けまいと、無様な姿を見せまいと!
…たかが部活だ。一生懸命やったから何だ。
どうせ負ける。終わりが来る。一生懸命やればやるだけ負けた時に苦しくなる。
僕はもう同じ結末を繰り返したくない!!
…キミに、僕の気持ちが分かるわけ?」
月島は自分を責めるように笑った。
同情してはならない。
「分からないよ。分かりたくもない。
だって憧れも、苦しみも、全部月島とお兄さんのものだから。同情したところでそれが消えるワケでもない。
…だけど、違う。
それを言い訳に逃げるのは、絶対違う。私はそんな逃げる月島は見たくない」
「…綺麗事ばっか。結局キミは僕にどうなって欲しいワケ?」
「…単純だよ。期待を押し付けても無駄だから、
___私のヒーローになってよ、月島。」
生温い風が吹いて、
目を開いた月島の髪が靡いた。
637人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なづな - 完結おめでとうございますっ!楽しく読ませて頂きました。後半の月島のデレにやられました…後、赤葦くんも好きなのでちょこちょこ出ていて嬉しかったです!体調などに気を付けてこれからも頑張って下さい!無理だけはしないようにして下さい。応援しています(*^-^*) (2020年4月29日 0時) (レス) id: c89830493e (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 亀さんさん» コメントありがとうございます!おぉ!気づいてもらえて嬉しいです(^ ^) 実は仕様なんですよね… 絶対結婚しますので式にはぜひご参加ください( ・∇・) そしてそのケチャップを月島くんに拭いてもらうんです(無限ループ) ありがとうございます頑張ります!! (2020年4月15日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» そして体調面や仕事の面も気遣ってくださりありがとうございます!体調のほうは大丈夫です。毎日ピンピンしてます笑 仕事の方はまだかなりしんどいです…でもこうして小説読んでくださってる方とやりとりできるのでストレス飛んできます笑 次回もぜひ読んでくださいね! (2020年4月15日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - しぃらさん» コメントありがとうございます!仕事落ち着きましたのでやっとですがお返事返させてもらいます(^ ^) そうです、後半はひたすらにデレさせました。デレ6くらい← 絶対幸せな家庭を築くと思います…式にはぜひ参加ください笑 (2020年4月15日 22時) (レス) id: 932e8eeb07 (このIDを非表示/違反報告)
亀さん - 完結おめでとうございます!今更ながら夢主の名字に運命を感じました←幸せな夫婦になりそうですね二人ははよ結婚して式にはよんでね((ツッキーのデレご馳走さまでしたおおっと鼻からケチャップが…()ありがとうございました!これからも頑張ってください! (2020年4月13日 12時) (レス) id: 99a2eebfea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はるか | 作成日時:2020年4月1日 20時