好物頂上決戦【月島 蛍】

寂しさと帰り道。 ページ21

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「ごめん俺ちょっと仕事呼ばれたから行ってくる。あ、(人1)これ家持ってっといて。母さんと父さんに」

「うん…兄ちゃん、一つ言いたいことある」

「なに？告白とか？」

「1週間ほど私に話しかけないでほしい」








ガーンと効果音がつきそうなほどショックを受ける兄ちゃんを放ってお店を出る。

お金はガチで兄ちゃんが払ったから、2人はとりあえず『ご馳走様でした』と声をかけていた。律儀か。









「(人1)のお兄さん凄かったね…」

「本当ごめんね…特に月島」

「…ねえ、あの人年いくつ」

「え、22歳だけど」






月島は一瞬固まって、「そう…」と意味ありげに呟いた。


さっきの羨ましい発言もそうだけど、何か思うことがあるのかもしれない。








「あ、ごめん。俺母さんに買い物頼まれてたんだった」

「え、」

「ごめんツッキー、(人1)！また明日の夜ね！」







固まる月島と私をよそに、山口くんは笑顔で手を振って行ってしまった。









「…最近このパターン多くない？」

「…ハァもう…行くよ」

「え、ちょっと待って、」

「無理。チンタラしてると置いてくから」

「意地悪すぎて泣きそう〜〜〜」

「そう言ってる内は絶対泣かないデショ」







それでも前みたいに、少しだけ、ほんの少しだけ、歩みを遅くしてくれる月島は、

きっと根は優しいのだと思う。







「へへ、」

「え、なに急に。気持ち悪…」

「何でもない！」

「…あっそ」









隣には並ばない。



少しだけ、後ろ。

その状況で話すのは、割と嫌いではなかった。









「…月島、」

「なに」

「…バレー、楽しい？」









前と同じ質問をする私に、月島の足が止まる。


ふ、と顔を上げれば、眉間にシワを寄せた月島の姿。









「…僕に、何か言いたいワケ？」

「…うん」

「言ってみなよ、何？」

「みんなが、山口くんが、新しい技を身につけようとしてるのに、

月島はどこか消極的だなと思って」





月島が部活後に自主練してる姿は一度も見ていない。


烏養さんが危惧していたのはそのことについて。









「…だから何。僕は熱くやるのが苦手なだけ」

「でも、」

「うるさい。もうこの話しないで」









月島がそう言った時、私の家に着いた。


またね、と言う私に、月島は背を向けて軽く手を上げるだけだった。








「(やっぱり、寂しそうだ)」








私は遠ざかる背中を見て、1人、思った。

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