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虜囚ノ虎ト深紅ノ姫君ー 想像 ー ページ48

×××


「一日目に痛むのは骨」


彼女が負った火傷の痕を見た中島は、俯いていたが、(やが)て顔を上げた。強い意志を宿した瞳でモンゴメリを見詰める彼は、自分の服を捲り、腹部を見せる。


「でも一番きつい(・・・)のは三日目だ。動くたびに火傷が擦れて 死ぬ程痛む」


彼女は驚愕し、瞳を大きく見開いた。
中島の腹部には、モンゴメリの腕に有る火傷の痕と同じで、大きな傷痕が残っていたのだ。

恐らく彼も彼女同様、幼い頃に暮らしていた孤児院で折檻を受けたのだろう。彼女は中島の環境を恵まれていると云っていたが、其れは違っていた。
中島とモンゴメリは同じ、辛く苦しい場所に居た。


「僕も同じ場所にいた。だから君の怯えも、孤独もよく判るよ」


中島は瞳を伏せた。


「でも孤独は 僕達を永遠に支配する王様じゃなかった。探偵社に来て、それが判ったよ。孤独は時に消え、時に現れる ただの朧雲だ」


冷静になって考えてみると、先刻現れた彼の人の言葉の意味が判ってくる。


「僕達にもう少し想像力があれば、もっと早く気づけたはずなんだ」


凡ては想像力の問題なのだ(・・・・・・・・・・・)。例え誰に認められている実感がなくとも、少し想像してみれば、誰もが認められている。そう考えれば、辛くとも生きていけた。
非現実的で、能動的な答えだ。

眼下に見える街の事を想像する。
何も知らず異能に支配され、街を破壊し、死のうとしている人達の中にも、嘗ての中島やモンゴメリと同じ立場の人々が大勢居る。


「彼等を見捨てれば 君は過去の自分を見捨てる事になる。___ それでも善いのかい?」


次の瞬間、景色が変わった。
空が描かれた天井、巨大な縫いぐるみに玩具箱と、ティーセット。
見覚えのある空間だった。中島は辺りを見回し「此処は......」と、呟く。
モンゴメリが創り出した異能空間【アンの部屋】だ。


「もう手遅れよ」


彼女は頭に着けていた三角巾を外し、震える声で告げた。
作戦書に書かれていた。一度発動した“ 詛いの異能 ”を止める手段がない事、皆を救いたいと思っていても、何も出来ない事。
だが、彼は諦めていなかった。


「太宰さんの異能『人間失格』で、その人形に触れれば 詛いは消滅する」


中島は以前、太宰の異能により救われた経験があった。屹度、この事態を鎮静する事が出来る筈。そう云おうとした時だ。
巨大な手が身体を掴み、壁に強く叩き付けられた。

其れは、異能生命体“ アン ”だ。


×××

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設定タグ:太宰治 , 文豪ストレイドッグス , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時

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