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狡イ私ヲ許シテクレルカイ? ページ29

×××


彼女の()に、私が映る事は無い。

其れは最初から、判り切っていた事だった。組合の車が衝突し、私と安吾が事故に遭った事を彼女に説明する。
だけど、彼女は屹度態度を変えないだろう。
提案を持ち掛けた時と変わらず、目の前の事を優先して動くと思っていた。


____それなのに、如何して?


『今から会えませんか』


君の声は微かに震えていた。
電話越しでも、ハッキリと判る位。驚いた私は、彼女の誘いに対し返事を返す事を一瞬だけ忘れてしまう。

場所は安吾が入院している総合病院前。通話を終えてから暫く待っていると、彼女は走って此処(まで)やって来た。
肩で息をしている様子を見る限り、全力疾走して来たのだろう。「......! 太宰さんッ」私の名を呼び、駆け寄った彼女は何度も深呼吸を繰り返していた。


「随分と急いで来たみたいだねぇ」


嬉しかった。
必死になって私の元に来てくれた。唯の自惚れかも知れないけれど、そんな風に想像するだけで、私の中の【何か】が満たされてゆく気がする。

利き腕がギプスにより動かせない状態な為、私は左手で彼女の柔らかな髪を撫でた。突然の行動に、彼女は琥珀色の瞳を見開き、驚いた表情になる。
この行動に、特に深い理由は無い。
何となくこうしたくなった。


「......何故撫でるのです?」

「理由は無いよ。君こそ、如何して私を此処に呼び出したんだい?」


彼女の口から、直接理由(ワケ)を聞きたかった。私は少々巫山戯て、こんな時だと云うのに逢引(デヱト)の誘いで無くて残念、みたいな科白を口走ってしまう。

けれど、彼女は何も云わ無かった。
その代わりに聞いた言葉に、私はまた驚かされる。


「貴方に会って、ちゃんと無事を確認したかったんです」


嗚呼、参ったなァ。


君を強く求めてしまう。____


私は彼女に口付け(キス)をした。
薄っすらと目を開けて、彼女の様子を見てみる。
頰を赤く染め、何が起きたのか判らないと云う表情(カオ)をしていた。


「.........君の事が好きだよ、ずっとね」


戦争中なのに、私は狡い人間だねぇ。
君は私を、許してくれるかい?


×××

光ヲ希求シ、闇ニ生キル→←紅ニ染マル貴方ノ表情



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設定タグ:太宰治 , 文豪ストレイドッグス , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時

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