紅ニ染マル貴方ノ表情 ページ28
×××
「......え?」
「貴方に会って、ちゃんと無事を確認したかったんです」
不安だった。
声を聞くだけでは、安心する事が出来なかった。彼の姿を自分の
私は自分の胸を撫で下ろし、ホッと一つ息を吐くと、「無事で良かった」と呟く。
その時だ。
安心している私とは異なり、少々困った様な科白が彼の口から放たれた。
「これは、参ったなぁ......」
何故か彼は小さく唸り、怪我をしていない方の手で、自分の顔を覆い隠してしまう。私は彼の科白と行動の意味がよく判らず、首を傾げた。
一体、何が“ 参った ”のだろうか?
「......あの、太宰さん?」
恐る恐る彼の名前を呼び、私は相手との距離を詰める。
そして、気付いてしまった。
「.........一寸、あんまり見ないで」
「......!」
彼の顔が、ほんのりと赤に染まっていた。彼のこんな
だって、何時も私が見ている彼は飄々としていて胡散臭い上に、余裕を崩さない。
そんな彼が、本当に珍しい事に頰を赤く染めている。相手からは「見ないで」と、云われてしまったが、其れは無理な話ね。
見ないでと云われたら、逆に見たくなってしまう。其れが人間の
「ふふっ 無理ですね、だって珍しいですもん」
寧ろ忘れない様、じっくりと見てやろうじゃあないか。
そして、自分の中に刻みつけてしまおう。ちょっとした意地悪心が芽生えた私は、彼の言葉を
「.........そんなに見たいなら、もっと近くで見てみるかい?」
不服そうな表情をしていた彼は、ふと思いついた様に呟くと、ニヤリと口角を上げて微笑った。
「......えッと、其れは如何云う........わッ!?」
突然彼に、腕を引っ張られる。
バランスを崩した私は、彼の腕の中にすっぽりと収まった。慌てて顔を上げ、「いきなり何をするのですかッ」と尋ねようとしたが、其の科白が私の口から発せられる事は無かった。
否、正確に云えば出来なかった。
私の目の前には、太宰の整った顔が有った。唇に触れる柔らかな感触で、私は漸く何が起こったのかを理解する。
「.........ッ」
×××
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時