検索窓
今日:2 hit、昨日:30 hit、合計:100,878 hit

琥珀ノ瞳ハ何ヲ映ス ページ27

×××


「......ッ」


靴音を鳴らして走った。
踵が少々高い靴は、走る事には向いていない。時々転びそうになり(なが)らも、私の足は止まる事は無く走り続けた。
全力で走るなんて久々だ。走る度に酸素は薄くなり、呼吸が苦しくなる。


「......! 太宰さんッ」


場所は総合病院前。
見慣れた後ろ姿を目にした途端、私は相手の名前を叫ぶ。
こんな風に必死に誰かの名前を呼んだ事が無かったから、私は少々自分でも驚いた。私って、ここまで大きな声が出せる人間だったのか。

彼の元に駆け寄ると、私はようやく足を止める。荒い呼吸を整える為に、胸に手を中て数回程深呼吸をした。
そんな私の様子を、彼の鳶色の瞳が見詰めている。「随分と急いで来たみたいだねぇ」なんて、口調は軽い調子だが、私は彼の右腕に目を向けた。


「......その、腕...」

「ん? 嗚呼コレかい?」


右腕のギプスをチラつかせ、彼は苦笑する。「利き腕が動かないのは厳しいねぇ」と肩を竦めたら、彼は利き手とは逆の手で、私の髪に触れた。


「......何故撫でるのです?」

「理由は無いよ。君こそ、如何して私を此処に呼び出したんだい?」


質問を質問で返された。先刻(さっき)、また彼から連絡が入ったのだ。坂口さんと彼の乗った車が、謎の衝突事故に遭った。
運転をしていた坂口さんの方は重傷だが、命に別状は無い。隣に座っていた太宰の方は、軽傷で済んだと聞いていた。

連絡を受けた時は驚いて、手に持っていた資料の束を床に落としてしまったが、二人とも無事だと聞いて安心した。( 拾い上げた資料の束は、安心したのと同時にまた落とした。 )

それで、会話は終了する筈だった。
私は彼に尋ねたのだ。


『今から会えませんか』____


私からの誘いを聞いた最初、彼は無言だった。
当然の反応だと思う。私の口から彼に会う約束を取り付けるなんて、今迄に無かった事だ。


逢引(デヱト)のお誘いじゃあ無かったのは残念だけど、会えて嬉しいよ」

「............安心したかったんです」


自分の()で直接、貴方の無事を確認したかった。


×××

紅ニ染マル貴方ノ表情→←想定外ノ夜想曲



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (110 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
392人がお気に入り
設定タグ:太宰治 , 文豪ストレイドッグス , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。