太宰夫婦は何故か続いている。【文豪ストレイドッグス】

風ト緋ト羅生ノ狗ー 黒悪魔 ー ページ19

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「潮風が＿＿＿ 胸に毒だ。手早く済ませよう」


辺りが紅に染まっていた。
先程迄普通に話し、動き、生きていた者達が一斉に、地面から現れた黒い獣の牙により、其の身を貫かれたのだ。
其の中でも目立ったのは、豪奢なドレスを深紅に染め、グッタリと動かなくなったマーガレットの姿。

ナサニエルは目を見開いた。
だが次の瞬間、彼は自分の口から吐き出される血に驚く事になる。身体に目を向けて見ると、彼等の身体を貫いた獣の牙があった。痛みは後から全身に襲い掛かり、身体からズルッと其の牙が引き抜かれれば、彼の身体はグラリと傾く。


「マフィアの......刺客ですか」

「気分は如何だ、組合の伊留満(いるまん)」

「最悪です......悪魔(ディアボロ)にでも遭ったような気分だ」


敵異能者に不意を突かれ、傷を負わされたのだ。気分が最高な訳がなかろう、彼は貫かれた際に出来た傷口を抑え、小さく笑いを溢せば「名を 聞きましょうか」と、目の前の男『芥川』に尋ねる。

暗く濁った瞳でナサニエルの姿を捉えると、芥川は一言「悪魔」と、答えた。自らの事を悪魔と云う姿勢、命を刈り取ろうとしているから其の様に答えたのだろうか。


「......ならばここはヘルモン山、貴方は 神の下僕たる私を試す試練(エクサミネ)ですか?」

「試練を望むか? ならば此を与えよう」


身に纏っていた黒い外套が変化した。先程、ナサニエルやマーガレットの身体を貫いたのは、芥川の異能『羅生門』である。着ている衣服を不定形、かつ何でも喰らう「黒獣(こくじゅう)」に変身させ操る能力だ。
黒獣は素早くナサニエルに向かって襲い掛かる、だが黒獣の牙は後一歩の処でナサニエルを仕留め損ねたのだ。
彼の能力『緋文字』が、黒獣の牙を弾いた。


「......!」

「私を助修士(イルマン)と呼ぶな、私は牧師(ミニスター)......ローマの遺物とは違う」


傷口から流れる血が、文字に変換されていく。


「その程度で私の信仰を閲するな......クズめ」


文字は芥川めがけ、先刻の羅生門の様に攻撃を仕掛けてくる。だが、芥川の能力は空間を断絶する力がある為、緋文字の攻撃は当たる直前で消えてしまった。


「悔い改めよ、マフィアの小男(リトルガイ)」

「面白い」


共に中距離を得意とした攻防一体の物質操作能力だ。 この対決の勝者となる者は、異能の潜在能力(ポテンシャル)に優れた方と云う事になる。

助修士と黒悪魔の対決が始まった。

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