風ト緋ト羅生ノ狗ー 駒 ー ページ18
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先刻迄、
相手の手の平から流れ落ちる血が、何よりの証拠。ナサニエルが違和感に気付き、緋文字を発動する事が後一歩遅れていたら、二人の命は確実になかった。
マーガレットは、ナサニエルの手の平から流れる血に其の目に映すと、何も云えずに黙ってしまう。自分が少し油断をした所為で、流さなくて善い筈の血を流させてしまった、そう思うと彼女はギリっと奥歯を噛み締める。
「ホーソーンさん!」
武器を持ち、武装した男達数名が二人を見つけると、ゾロゾロと駆け寄って来る。皆傷を負っていたが、如何やら爆発の中を生き延びた者達の様だ。
「敵は我々の逃走経路に罠を張っています」
「下手に動けば 個別撃破される」
詰まり、この場所から動く事は出来無いと云う事だ。ナサニエルは彼等の話に耳を傾けると、状況の最善策を考える。
「ここで敵を迎え撃ちます」
彼の言葉に、残った組合の人間達は驚いた。だがナサニエルは冷静で、驚いた表情を浮かべる彼等に向かって、淡々とした口調で云う。
この様な状態に陥っても尚、彼の表情と態度は変わらなかった。其の冷静さと判断力に、彼等は返って救われているのかも知れない。ここで焦っていては、敵の思う壺だからだ。
敵の奇襲攻撃は先刻の爆弾で終わりだろう、其の攻撃で命を落とさなければ、ナサニエル達にも未だ勝機はある。
「奇襲さえ封じれば、異能者が何人来ようと私の敵ではない」
***
「____と、敵が考えだす頃だろうねぇ」
ポートマフィア拠点 首領室
森は並べられたチェスの駒を見詰乍、ポツリと呟いた。隅の方では森が溺愛している幼女のエリスが、壁のあちこちにクレヨンを使って可愛らしい絵を描いている。
敵の方を白、自身の部下を黒のチェス駒に見立て動きを予測し、配置しているのか、彼は顎に手を中てて「ふむ......」と次の手を考えていた。
「確かに組合の異能者は脅威だ、うちの精鋭でも撃破は難しかろうね」
撃破は難しいが、
「と云う訳で____今うちで 一番遣る気に溢れた子を配置した」
黒いチェス駒に手を伸ばし、一歩前に進める。彼が配置した人物は、ポートマフィア遊撃隊隊長を任せられた男__『芥川 龍之介』だった。
駒の配置を終えた後、森は苦笑する。
「君は白にも、黒にもならないから......困ったものだよ」
女王の駒は未だ置けない。
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時