風ト緋ト羅生ノ狗ー 贖罪の誓い ー ページ17
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マフィアは必ず、自分達の命を狙って来る。客船が梶井お手製の爆弾で沈められた事により、予告状に書かれた内容が本気なのだと判った彼等は、自分達の身を守らねばならないと感じた。
「間もなくここには敵兵が押し寄せます、あちらの非常用避難路から撤退しましょう」
船の火消しで大騒ぎになっている間を利用して、ナサニエルとマーガレットの二人は港に有る避難路に向かう。
完全に敵をナメてかかっていた、一度作戦を練り直すべきかも知れない。ナサニエルが敵の刺客が居ない事を確認すると、避難路の階段をマーガレットは降り始めた。
地下に続く階段は、足音が響くだけでなく中が少々薄暗くて不気味である。
すると、階段を最後まで降りた地下の方に人の影があった。またマフィアの刺客が来たのかと、二人とも足を止めて警戒する。
けれど其れは違った様だ。
「貴方は確か 上級秘書官の」
其れは、マフィアにやられたと聞いていた同じ組合の人間だった。刺客では無かった事と、相手が無事だった事に安心した彼女は、急いで階段を駈け降りると相手に近づく。
だが、彼は其の秘書官の様子が何処か可笑しく思えたのだ。先程から、全く動かず問い掛けにも反応しない、人形の様に直立している秘書官を、彼はジッと見詰ていた。
そして彼は秘書官の
「ミッチェル!」
敵の罠だ、近づいたらいけない。彼女の名前を呼び、止めようとしたが遅かった。足元にも糸が仕掛けられていて、彼女は其の糸に足首を引っかける。
其れが引き金と成り、秘書官の顔がバリッと裂け、中から大量の檸檬型爆弾が姿を見せたのだ。
溢れ出した爆弾は一気に爆発をし始め、避難路を爆煙と炎で焼き尽くした。爆発の威力は相当で、地下の壁には皹が入ったり、瓦礫が崩れ落ちたりしている。
ミッチェルは吸い込んでしまった煙の所為で少し噎せ返っていたが、奇跡的に身体は殆ど傷を負っていなかった。
不思議に思った彼女は身体を起こして前を見る。
其処には自分を爆発から守る様に、前に立つナサニエルの姿があった。それだけでは無い、彼の異能である『緋文字』が盾となり、爆発に巻き込まれる事を防いでいた。
「我が緋文字は贖罪の誓いにして 精霊のいと高き言葉 そは邪悪の一切を沮む
ナサニエルの緋文字は、自分の血液を聖なる文字に変えて操る異能。彼の手から流れ落ちる血に、彼女は命を救われたのだ。
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時