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河村side



打ち合わせの帰り道。



「引き受ける事にしたんだね。」



と、Aに声をかける。



『まぁね。どうなるかは分かんないし不安もあるけど、結局好奇心が勝っちゃった。』



なんて彼女は笑っているが、正直この決断は意外だった。

慎重派な彼女の事だ。てっきり断るのかと思っていた。

好奇心、なんて言っているが、絶対にそれだけじゃない。

と、すれば。

彼女の考えを察して、それ以上を聞くのはやめることにした。



「色んな事情は全然伊沢たちに伝えてないけど大丈夫?」

『あぁ、そっか。立ち位置の事は頼んでおかなきゃ。たぁ兄から伝えてもらえる?』

「ん。場所の話だけでいい?」

『そうしてもらえるとありがたい。なんか聞かれたら良い感じに誤魔化しといて。』

「了解。」



実は彼女は数年前から左耳があまり聞こえていない。

原因不明と言っているが、僕には何となく心当たりがある。

だからいつも、僕は彼女の右側に立つ。



「もっと周りを頼ればいいのに。」

『心配かけたくないの。』



と拗ねたように言う。



「ま、でも伊沢も福良もかなりAの事は気に入ってる雰囲気だったし、何とかなると思うよ。」

『ほんと?そう言って貰えるとだいぶ安心。』

「もしかしたら今度の撮影の内容次第じゃQuizKnockにスカウトされるかもね。」

『ハハッ、ありがたい話だわ。』



なんて冗談めかして言っているが、これは結構リアルな話だ。

伊沢があの提案をした時点で、今回だけの思いつきの話ではない、きっと何か今後を見越した考えあっての話である事はほとんど確実だ。

そしてそれに対して福良も何も言わなかったということは、Aは彼らのお眼鏡にかなったという訳だ。

当然僕は彼女を信頼しているし、評価もしている。

そしてこれは、きっとAにとっても悪い話じゃないはずだ。

あとは、彼女がどう出るかだ。

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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時

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