助けた理由は二つとは。 ページ25
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Aは無意識に動きを止めた。
静寂が二人を包み込む。
少し経ってから口を開いた。
『何故って、アンタに頼まれた__』
「いいや。今回はそうだとしても、君は以前に一回...彼らを助けている」
太宰が人差し指を立てながら言った。
いつもの笑みを浮かべている。
「敦くんが密輸船で異国に運ばれそうになった時、鏡花ちゃんは爆弾を仕掛けてそれを制した。
その爆弾を用意したのは、君だろう?」
Aは答えなかった。
沈黙__それは肯定を意味していた。
あの日、Aは鏡花との茶会(?)を終えた際、車の中にアタッシュケースを置いていった。
わざと開けたまま。
其処には言わずもがな、爆弾が入っていた。
用意したのは紛れもないA。
太宰はあの場にいなかったが、以前敦と鏡花から話を聞いて判ったのだ。
「もう一度聞こう。何故、敦くんと鏡花ちゃんを助けるんだい?」
はぐらかしは許さないとでも言いたげに、太宰は問いた。
知りたいからだ。
下手すれば組織への裏切り行為になってしまう。
そんな危険をしてまで、彼らを助けた理由が。
数秒の沈黙が続いた。
Aは観念したかのようにため息をついた。
『泉ちゃんは、私と似ていたからっていうのも一つあるけど..."人を殺したくない"と思ってるマフィアに、これ以上こっちの世界にいたら何時かは壊れると思った』
「成る程。では、敦くんは?」
『憧れたから』
太宰は目を見開いた。
敦に"羨ましい"という感情を向けていることは予想もつかなかったのだ。
『私が"生きたい"と思えるようになったのなんて、あの時からだった。
私と似た境遇にいた筈なのに、敦くんは最初から"生きたい"と強く思ってた。
羨ましかった。
嫉妬した。
憧れた』
A自身、そんな変な理由で助けたのか...と乾いた笑いしか出なかった。
けれど、これしか理由が見つからなかった。
そんな彼女の頭に太宰は手に乗せ、ただ優しく撫でた。
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でんでん - 徳永さんの黒の時代がとても面白いです! (2月26日 0時) (レス) @page7 id: e3b856a7a9 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと - https://cdn.picrew.me/app/share/202005/258388_pj2ocJeQ.png (2020年5月11日 9時) (レス) id: 623f3ee5b5 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと - ミニ徳永ちゃん (2020年5月11日 9時) (レス) id: 623f3ee5b5 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと - 夢主徳永ちゃんです!Pcuruで作りました (2020年5月11日 8時) (レス) id: 623f3ee5b5 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと - https://p02.nosv.org/?src=https%3A%2F%2Fcdn.picrew.me%2Fapp%2Fshare%2F202005%2F42922_NjYLl6l1.png&w=600&h=&ext=1&zc= (2020年5月11日 8時) (レス) id: 623f3ee5b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2018年1月13日 1時