Hajime.02 ページ22
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「…っねえ!岩ちゃん聞いてよ!!こないださあ_」
「相変わらず騒がしいな、お前は」
店に入り着席した途端、向かいから興奮した声が飛んでくる。
俺はまず飲み物頼みたいっつうの。
及川のブーブー言う声は無視してメニューに目を通す。
「すんません、生2つ」
「かしこまりました」
「あー!俺のも勝手に生にしてー!今日はワインの気分だったのに!」
「ワインなんか飲んだらすぐ潰れるだろーが。てめーは今日ビールと酎ハイしか飲むな。なんなら烏龍茶飲んどけ」
「ムキー!!」
じゃあ食べ物は全部俺の好きなもの頼むもんねー!とか言う及川。ガキでしかない。
「…なあ、」
「なに?ポテトはチーズ味から変えないからね」
「及川、お前、幸せだな」
「…は?」
「バカだなって言ってる」
「…はぁ〜?
幸せなの?バカなの?どっち」
「どっちもだろ」
「あーはいはいそうですか!すいませーん」
店員に注文してる奴の顔を眺めながら、本当にバカなやつだと笑えてくる。
この間、松川に電話をかけた。
用件はただ授業がどうとか部活がどうとかそういう他愛のない話だった。
電話をとった松川は「岩泉から」と口にした。誰かに説明するように。
その後普通に会話していると、「一静、ケチャップの替えどこ置いたー?」と。
日常のように、俺が聞いてきた及川との会話のように、Aの声が聞こえた。
その声に答えて、それから苦笑してると分かる声で俺に、「もう及川にはバレた」って、松川が言う。
ただその言い方からして、決して幸せな関係じゃないということは分かった。
俺は何も聞かなかった。
Aがなぜ松川と一緒にいるのかなんて、考えなくてもすぐにわかる。
及川をまだ愛しているから。
コイツの恋がうまくいくようにと、自分の存在を消そうとしているんだと。
「そんなに思われて、お前は本当に幸せなやつだよ」
「……ねえ、岩ちゃん。」
「あ?」
「言ったよね、前に、"フラれてこい"って」
「…あー」
「…俺、そろそろ覚悟決めなきゃだよね」
「…」
「…告白する。園美さんに。その後はもう分かんない」
「ほーん」
「ちょ、"ほーん"ってなに!?真剣に話してんですけど!?」
「へーへー、頑張れ頑張れ」
例えその先輩に告白しようと、その結果振られようと振られまいと、お前の心がはっきりしないままじゃ、何も変わらない。
ただその告白で、先輩への想いが吹っ切れたならいいな。
俺はただそう願うばかりだ。
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radio-co.(プロフ) - 励ましのコメントありがとうございます!文庫化なんて畏れ多いです汗 言葉を大事にしすぎて一言一言が重苦しくなるのが欠点でして……。もう少しラフに書けるといいなー書きたいなーと思っています笑 これからも是非応援宜しくお願いします(/\)\(^o^)/ (2017年12月29日 16時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
radio-co.(プロフ) - どっどっどうもありがとうございます!(#^.^#) 文章力とストーリーの両方を誉めて頂けるなんて、これほど嬉しいことはありません!あやせさんのこの言葉を励みに更新頑張っていきますので、これからも温かく見守ってくださいね。 (2017年11月29日 17時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
あやせ(プロフ) - あっあっあの、好きです(語彙力) 引き込まれるストーリーと綺麗で丁寧な文章表現、本当にすごいなと思いました。これからも応援させていただきます…!! 更新楽しみにしてます〜(*^^*) (2017年11月22日 16時) (レス) id: a236a20ef8 (このIDを非表示/違反報告)
radio-co.(プロフ) - ユラさん» 大変な誉め言葉をありがとうございます!汗 更新が不定期で申し訳ありません。ここから皆の恋愛が動いていきますので、これからもどうぞよろしくお願いしますね。 (2017年10月2日 16時) (レス) id: ee8f50fb78 (このIDを非表示/違反報告)
ユラ(プロフ) - 凄く大人っぽいのに読みやすくて、あっという間に夢中でした!やばいこれ超良作じゃん!とか言って一人で騒いでます笑。及川くん達のこれからがとても気になるので、更新、お願いします!! (2017年9月26日 0時) (レス) id: 9a45404af6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:phobia | 作成日時:2017年2月18日 10時