大好きな君に伝えたい言葉【キルクラ】

嵐の出会い　6 ページ7

「これで全員か」

そっと、視線を辺りに巡らす
他の船室よりも多少広いそこには豪華な調度品が指折り程度に飾られていた
また、ため息が1つこぼれる
こういう場所は、居たたまれない気になるから余り好きじゃないんだ

「ったく。何だよ、おっさん。こんなとこに呼び出して何する気だ？」

「……こんな嵐だ。することも無いだろ。お前らの相手をしてやろうと思ってな」

「はあ！？別にいらねーよ。そんなの。オレはこれから本でも読もうとしたのによ」

文句を言う細目の男を尻目で見ながら、クラピカは「船長」を観察した
肥満気味の体に、ボサボサの顎髭
一見、だらしのない老人だ

でも、人を見定めるような鋭い目つき
腕っ節の強さとか、そういう類じゃないけど、
油断はしてはいけない
直感的にクラピカは悟った

気まずい沈黙
それを起こした当の本人はまだ、ブツブツと文句を言っている
何なんだ、こいつは…
少しは周りの空気を考えろ
口には出さずとも、こっちまで、文句を言いたくなる
険悪な雰囲気が否応なしに部屋に立ち込めたときだった


「そうなんだ！船長、ありがとう！！オレずっと退屈してたんだ」

この場に合わないあっけらかんとした、明るい声音
振り向けばゴンは、満面の笑みを浮かべていた
思わず、こっちまで微笑んでしまうほどの、

ゴンはこういうところがある
人を和ませる天性の何か
そこに居るだけで、自然と毒気が抜かれるのだ

船長もきっと、そう
口元は髭で隠れて見えないけど、目つきが柔らかくなった
だからといって、鋭いことには変わりはないが


「1人で居るよりはいいだろう？そこのガキが言ってる通り、俺も退屈してたんだ。まあ、話し相手にでも付き合え」

ギロリと、男を船長は見つめる
その目に圧倒されたのか、やっと、彼の煩い口は止まった

「…さて、お前らハンター受験希望者だろ？まさか、今年は船に残る奴がいるとはな。名前は何て言うんだ？」

「オレはゴン！」

「…オレはレオリオと言う者だ」

「私の名は、……クラピカ」

舐め回すように船長は私達を見回す
何かを識別するように、
しばらく沈黙が続いた後、船長は口を開いた

「お前ら何故ハンターになりたいんだ？」



体中に一気に拒絶反応が出た
肺は潰れたかのような息苦しさを覚える
頭も殴られたように鈍い痛みを感じる
ダメだ
答えられる訳が無い
これは、あまり人に話してはいけないことだから
自分の身の安全の為にも、

自分自身の為にも、

嵐の出会い　7→←嵐の出会い　5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す