大好きな君に伝えたい言葉【キルクラ】

嵐の出会い　5 ページ6

「何か用か？」

凛とした澄んだ声が響く
伸ばしかけた手はそのまま空を掴んだ

「起きてたの？」

急に話しかけられたことに驚きながらも、彼に尋ねた

「別に寝てはいない」

そう言いながら、ゆっくりと体を起こす

「私に何か用か？」

顔に似合わない堅苦しい言葉で、彼は再度問う
汚れの無い真っ直ぐな琥珀の瞳が、睨むようにゴンを鋭く見つめた

「船長さんが呼んでたんだ。船に残ってる人を探してこい、って」

そう言うと、ゴンは花が咲いたように満面の笑みを浮かべた
偽りの無い、心からの笑顔で
青年はそれを複雑そうに見ながら、小さくため息をつく

「……そうか」

ハンモックから降り立つと、彼は小さな笑顔を作りながら、ゴンに向き直った

「それはすまなかった。面倒をかけたな」

「ううん！そんなことないよ。船の中探検できたから、楽しかった！」

そう言って、ゴンは笑う
キラキラと、光輝く笑顔で
その眩しい笑みを、彼は目を細めて見やると、また、小さな笑みをゴンに向けた





「ねぇ、君の名前何ていうの？
　オレはゴン！」

彼について、色々しりたいけど、まずはこれから
ゴンは純粋にそう思ってクラピカに尋ねた
興味津々な少年に対し、彼は半ば呆れたように隣に目を向ける


「何故、教える必要がある？」

彼の話にも先程から適当な相槌しか打っていないし、自分が話し上手であるとも思わない
私自身、つまらない人間であることを理解している
それなのに何故、彼はこんな人間の名前を知りたいのか到底理解出来なかった

「君を知りたいんだ。だから君の名前を教えて」

ドクン、

心臓が大きく波打つ
驚いた、素直に
同時に、嬉しい
気を緩めてしまえば、胸のくすぐったい気持ちに気づいてしまいそうで、
彼の純粋さが、優しさが、私のよく知る彼と相反する



彼は外の世界の人間だ
それは理解している
でも
彼はきっと

「……私はクラピカだ」

意識も無く、言葉は出た
クラピカにしては珍しい程、頭で考えるよりも、気持ちが先に動いた

「クラピカ！よろしくね！！」


ドクン、

また、心臓が波打った
クラピカの体を暖かい感覚がゆっくりと巡る
むずかゆくもある、懐かしいこの感覚
緩みそうになる頬を強く、強く、引き締める

「…あぁ、宜しく頼む。……ゴン」

確かめるように彼の名前を呼べば、また、あの輝く笑顔を向けられた

偽りの無い、真っ直ぐな
優しくて綺麗な笑顔

でも、それは苦手なんだ
どうしても、
彼の面影が君と重なってしまうから

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