大好きな君に伝えたい言葉【キルクラ】

嵐の出会い　4 ページ5

荒れ狂う波音が船内に木霊する
太陽の光を遮断してしまう程の厚い雨雲が空一面に広がれば、どこもかしこも薄暗い闇に包まれた
けたたましく唸る海の中、船は当然の如く進む

最早不安定とも言えない位に揺れ動き、船員は慌ただしく駆け巡る
しかし、彼らに混じって歩く少年が1人
頼りない足場にも、しっかりと、歩を進める彼
そんな彼を訝しげに見る船員達だが、立ち止まって事情を聞いているのをこの船の主の船長様に見られれば、大嵐の中、容赦なく海に投げ込まれるのは必須
そんなことをされてしまえば、幾つもの海を股に掛けてきた彼らでもすぐにあの世行きだ
どのみち、こんな大嵐だ
人と話す余裕なんてあるわけがない
だから、それとなく道を開けながら、少年を横目で見つつも、自分達の仕事に大急ぎで取りかかっていた



一方、ゴンは船長様からのご命令で人捜しをしていた
嵐のとき、船の中が忙しくなるものをゴンは幼い頃から知っていた
手伝いでもしようか、そう思って船長室へ訪ねたときに、

「この船に残っている船員以外の人間を捜してこい」

と頼まれたのだ
とはいうものの、他の客達は先程、救命ボートで船を出て行ってしまった者ばかりで、船員以外の人間はなかなか見当たらない
唯一見つけたのは、スーツ姿の男だけだ
食堂や船室、以外にも広い船内を見回しながら、ゴンは歩き回っていた


もう、いないのかなー
そんなことを思いながら、最後の船室を開ける
廊下から差し込む明かりを頼りに、暗い船内を見回した

相変わらず静かで無機質な部屋
でも、今までの部屋と違う所が1つ
ハンモックの影に隠れながら、暗がりの中からでも分かる位に輝く金髪が、ゴンの瞳に移った
それでも、その人が動く気配は感じられなくて、
寝てるのかな？
微かに聞こえる規則正しい呼吸音から、ふと思う
音を立てないようにしながら、ゆっくりと彼に近づいた


「あ、」

見覚えのある顔に、思わず声を出してまい、慌てて口を抑える
短い金髪の髪に白く透き通った肌、そこに置かれた綺麗な顔
見間違える訳がない
ゴンが初めて、この船で目を交わした人間だ
あのときは目を合わしただけで、彼と話すことは無かったけど、不思議なことに彼のことはしっかりと記憶に残っていた
彼も、もうここにはいないと思っていたから、また会えたことが嬉しくて胸が躍る

静かに眠る彼
起こすことは忍びなかったけど、彼と話したい気持ちの方が大きくて、
優しく肩を叩くようにゴンはそっと、手を伸ばした

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