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嵐の出会い 3 ページ4

「出発するぞー!」

ドスの聞いた船員の声が船に響く
同時に、鯨そのものの形をしたクジラ島から船が離れていった

「ミトさーーん!行ってくるよー!絶対立派なハンターになって戻ってくるからねー!!」

突如、少年の叫び声が私の鼓膜にうるさく響く
驚いて振り返ると、緑の服に包まれた幼い少年が千切れんばかりに、両手を勢いよく振っていた
見たところ、まだ12、3だろう
私も受験希望者としては若いほうだが、彼は別段に若い
周りの人間は非難めいた顔で見ているが、そんなことは微塵も気にせずに悠然と歩く彼
すごい、素直にそう思った
思わず、じっと少年を見つめる
光を宿しているかのように輝く、大きくて丸い瞳
優しげな顔をした彼は、何か人を惹きつける魅力を持っている、そんな気がした

いきなり、少年はこちらに顔を向けた
当然、彼を見つめていた私と目が合う訳で…
ほんの数秒だけ視線を交わす
彼は瞳を細めて笑いかけてくれたが、私は頭を軽く下げてその場を後にした
だって、あんなキラキラと輝く瞳で見つめられたくはなかったから
自分の存在価値に気づいてしまいそうで怖かったから
心の中で言い訳をしながら、少年から逃げるように船室へ戻る
それだけで、胸のざわつきはすっと止まった


人と関わらないよう生きて、もう数年が経つ
他人の温もりも、優しさも全て関わらないよう生きてきた
別に寂しくはない
私にとってそれは、クルタの民で十分埋め尽くされているから
あの、暖かい一族に…

でも、それと同じくらいあの少年の瞳も暖かかった、ような気がした
初めて会っただけなのに
ふと、笑いが込み上げる
私らしくない
これはきっと、ほんの気まぐれだ

最初にいたハンモックへ戻り、体を横たえる
少しだけ、目を閉じていよう
今度は夢を見ないように
目蓋で瞳を覆う瞬間、潮の香りがクラピカを包んだ
また目を開けたときに、海でも見に行こうか
そんなたわいもないことを思いながら、クラピカはゆっくりと瞳を閉じた

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設定タグ:HUNTER×HUNTER , キルア , クラピカ   
作品ジャンル:アニメ
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純花 - 頑張って下さい! (2019年10月5日 10時) (レス) id: d5c5fac556 (このIDを非表示/違反報告)
柊 ニイナ - 久しぶりに更新をしてみたら、なんということでしょう、星が黄色になっていました。評価して下さった方、お気に入り登録して下さった方、小説を読んで下さってる方、本当にありがとうございます。気まぐれな作者ですが、これからもよろしくお願いします。(o´ω`o) (2015年8月20日 0時) (レス) id: 00fd6c485f (このIDを非表示/違反報告)
◇ライト◇(プロフ) - 柊 ニイナさん» はい!楽しみにしてます(*´∀`) (2015年3月6日 23時) (レス) id: 27e7b74444 (このIDを非表示/違反報告)
柊 ニイナ - ◇ライト◇さん» ◇ライト◇さん、ありがとうございます。学生の敵(テスト)をやっと倒せたので、これからは更新率増やしていけるよう頑張りたいと思います。 (2015年3月6日 5時) (レス) id: dfd590a73e (このIDを非表示/違反報告)
◇ライト◇(プロフ) - すごく続きが気になります!更新頑張ってください!! (2015年3月5日 1時) (レス) id: 27e7b74444 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柊 ニイナ | 作成日時:2014年12月10日 22時

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