大好きな君に伝えたい言葉【キルクラ】

1次試験　1 ページ13

「イルにい」

「何？キル」

「外の世界って楽しい？」


キルアが本当に小さな頃、
まだ暗殺の訓練も本格的に始まってはいない頃、
自分の兄に1つの質問を投げかけた

「楽しい？何でそんなこと思ったの？」

「え…。だって、絵本にかいてあったから。外には、楽しいとこがたくさんあって、友達がたくさんいるって」

「…」


自分よりもはるか下にいる弟をイルミは見下ろした
小さなため息をつくと、腰を下ろしてキルアに目を合わせる

「…そうだね。外の世界は家よりも賑やかだし、おいしいものも沢山あるよ。当然、人だって沢山いるね」

頭を撫でながら、外の世界での記憶を辿る
活気のある広場や、その喧騒を賑わす人々
色とりどりで華やかな売り物を並べられた商人や、明るい音楽

とても、綺麗だと思う
自分を忘れるくらいに


…でも、だからこそ思い出される
自分がどれほどその場に不釣り合いな存在なのかを
自分が人と交わることは決して出来ないということを


キルアの頭を撫でる手を止めた
そうだ、この子にはちゃんと教えなくてはいけない
誰も教えてくれなかった自分達の「立場」というものを
何かに期待をしてはいけないことを


「だけど、楽しいことはないよ」

「…え、」

「オレ達が外に出るのは仕事のときだけだ。何かを楽しむために外に出るなんて、そんなに無いんだよ」

悲しみで揺れる青い瞳
父や祖父の血を確実に強く受け継いでいるその瞳
だからこそ、教えなくてはいけない


「キル、お前に友達なんて出来ない」


キルアの目が大きく見開いた

「な、んで？」

「キルは人を殺すことしか出来ないから」

一瞬、その瞳が滲んだように見えた
でも、言葉は止めない
弟がずっと、頭に残る言葉を刺し留めた

「そうやって、1人で生き続けるんだよ」






　
　



・

　


「オレはゴン！君は？」

「オレはキルア」

「キルア、よろしくね！」


暗がりに紛れて見える顔に向かって、キルアは笑いかけた
自分と同年代の子をこんなに間近で見るのは初めてだった
少し、気分が上がる

「キルアは1人で来たの？」

「あぁ、そうだぜ。お前は？」

「オレはクラピカとレオリオと一緒に来たんだ！」

いつの間にかゴンの横に並ぶ2人を見ながら教えてくれた


仲良くなれるかな…

彼らと笑っているゴンの横顔を見ながら、ふと思う
そんなこと、思ったの初めてだった
だから、少しだけ嬉しくなる

やっと、自由になれたような気がしたから

1次試験　2→←＃2　ハンター試験

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す