大好きな君に伝えたい言葉【キルクラ】

＃2　ハンター試験 ページ12

チン

軽やかな音が無機質な空間に響くと、扉が開いた
瞬間、鼻につく臭いに思わず、顔をしかめる
広々とした空間には、そこに見合わない人数の屈強な体の男たちが、
それらを一瞥すると、扉の外へ一歩、足を踏み出す

刺さるような視線が、体中に突き刺さる
だけど、そんなのなんとでもないかのように軽い足取りで少年は歩く
時折、その反動でふわふわと透明感のある銀髪が揺れた


「どうぞ、番号札です」

緑豆に渡されたカード
そこに示された99の文字
大方、人数順に渡されているんだろう
あんなに道草くってのんびり来たのに、まだこれしか来てないんなんて
あーあ、やっぱ来るんじゃなかった
すっげー難関だって言うから、楽しみにしてたのに
こんなんじゃ暇潰しにしかなんない
せっかく自由になったのに、

ハンター受験に参加できる資格が貰えるまで、まだ、かなりの時間がある
それまで、ここにずっといるわけ？

大きなため息がこぼれた
こんなむさ苦しい場所になんてずっといれるかよ

「どうした？緊張でもしてるのかい？」

急にかけられた声
振り向くと、小太りのおっさんがいた

「なに、あんた、だれ？」

「あぁ、ごめんごめん。まだ、名前を言ってなかったね。オレはトンパ。よろしく」

差し出された手
脂ぎってそうな手
触るのは躊躇われても、その気持ちを抑え込んで握手する
それに気を良くしたのか、ニコニコ笑っちゃって、

バカだねー
あんたの下心なんてまる見えだよ
いい人づらしてさ、

「君、新顔だろ？子供なのにすごいね。こんなに早くここに来るなんて。こんな子初めてだよ」

「ハハッ。そんなことないよ。オレ、こういう宝探しみたいの得意だからさ、たまたま感が当たっただけだって」

「それでもすごいよ。
　…そうだ！お近づきの印にこれをあげるよ！ここまで来るのに疲れただろ？」

懐から取り出された缶ジュース
なんか見るからに怪しいって感じ
でも、別にオレには関係無い

「わーー、ありがとう！喉渇いてたんだー」

プシュッと蓋をあけて勢い良く腹にいれる
喉が渇いてたってのは本当
実際ここまで来るのにろくなもん口にしてこなかったし、
口いっぱいに広がるオレンジの味
ん、うまい



横目で相手に目を向ける
満足げなその顔に下卑た笑みが含まれていることに、こいつはきっと、気づいていない

バカだね、ホント
そんな相手の顔を見て、思わず引き裂いてしまいそうになる自分の指を抑えながらまた一口、その液体を口にした

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