番外編 : 痛い ページ44
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最近は一旦家に帰って侑の世話を焼いて、
臣の家に泊まりにくることが多くなった。
ソファに横になってテレビを見ていると、
お風呂から上がってきた臣が視界を遮った。
「風邪ひくで」
「いつもの、やって」
「もー」
体勢を起こして足の間に座ってもらう。
タオルを受け取ってわしゃわしゃと拭くと、
「んー…」と小さく声が漏れた。
「痛くないですかー」
「結婚しよう」
「うん。ん"っ⁉」
「いってぇ!」
不意をついた言葉に驚いて、首をグキッと回してしまった。
恨めしげにコチラを睨んでくる臣に、
ひとまず謝ったけどそれどころじゃない。
心臓がぎゅんってなって、拍動はどんどん強くなっていく。
「い、いい今なんて…」
「結婚」
「え、ぇっ、」
「…嫌?」
「嫌なわけない!」
まだ頭がついていかなくて、
まだ言葉が飲み込めなくて、
無意識に震えていた手を、臣はそっと握った。
「ずっと考えてて。
今日、Aが色々言われてんの聞いて腹立った」
「え…あ、あの…」
「ん?」
「…わ、私でいいの…?」
「はぁ?」
小さく震える声で言葉を振り絞ると、
臣は一瞬顔を顰めたけど、
後頭部を掴まれて、次の瞬間には唇が重なる。
「お前以外誰がいんの」
「…!」
「堂々としてたらいいんだよ。職権乱用なんかじゃねぇし」
悩んでたことも苦しいことも、
全て包み込んでくれる優しさに、
目の奥がじわ、と熱くなって。
すぐに視界がボヤけて、頰に涙が伝った。
臣は優しく笑って私の隣に座ると、
泣きじゃくる私を壊物を扱うように優しく抱きしめた。
胸の右側で、私に負けず劣らず、
飛び出そうな程心臓の音が鳴っている。
「…おみも、心臓うるさい」
「……うるせー。…コレでも緊張したんだよ」
「あは、めずら、んむ、」
臣は煩しそうに顔を顰めた後、
黙らせるように唇を塞いだ。
視界が臣でいっぱいになって、
同じシャンプーの香りに包まれた。
「…うれしい。すき、だいすき」
「っ、…」
「臣も言ってぇやぁ」
「………すき」
臣は赤くなった顔を手で隠して、目を逸らす。
照れてる臣が可愛くて、でも少し恥ずかしくなって、
誤魔化すように臣の胸元に顔を埋める。
「照れてるー、かーわいっ」
「うるせぇ馬鹿」
「えー、ヒドイなぁ」
…何だって出来るって思った。
この人と一緒なら、って。
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しょーゆ - 好きです。もう何十回と読んでますが毎回キュンキュンします。 (8月28日 21時) (レス) @page23 id: 3bdb915083 (このIDを非表示/違反報告)
そらまゆ🌸🍓 - んにゃー!!!!臣くんかっこかわよい!!!!あ、すみません。コメント失礼します。主さん、このお話、最高です!!!何回も読んでも飽きないです! (2022年4月30日 19時) (レス) @page45 id: 7272f2ecda (このIDを非表示/違反報告)
葵梗花(プロフ) - れんさん» 詳細をお聞かせいただければ幸いです。よろしくお願い致します。 (2020年12月26日 13時) (レス) id: af0a567945 (このIDを非表示/違反報告)
葵梗花(プロフ) - れんさん» こちらの方が半年以上も遅くなってしまい申し訳ございません!!占ツクに戻ってきたのが数日前で、やっとの思いでお返事書かせて頂いております。本当に申し訳ございません。さっそくボードに行かせて頂きます。お返事はいつでも大丈夫ですので、余裕が出来た時にでも (2020年12月26日 13時) (レス) id: af0a567945 (このIDを非表示/違反報告)
れん(プロフ) - 星蘭さん» コメントありがとうございます!そんなこと言っていただけて嬉しいです…!また番外編も考えてみます!^_^ (2020年10月12日 22時) (レス) id: c0cfdfe5c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れん | 作成日時:2020年4月6日 22時