七話 ページ9
「えっ、野郎を褒める趣味とかあるの？おじさん」
「んなもんあるか、馬鹿」
からかったつもりが、あっけなくおじさんに切られてしまい、少々ちぇっと不機嫌になる。すると、突如馬車の馬がやけに唸るような騒動音をたて始めた。
「お、見えてきたぞ」
俺から視線を外して、前方を見たおじさんは。楽しげに言う。俺はおじさんの肩から小さな窓際を覗き込んだ。
「で、でけぇー街だなぁ、こりゃあ……」
「おうおう、そうだろうよ。お前がどこ出身か俺は知らねぇがここは首都と比べてもでかい街よ」
夜風が顔の横をすり抜ける。
おじさんが遠くを見ながら目を細める。つられて俺も視線を上げる。黒く広がる海のかなたからと夜明けと共に太陽の淡い赤が差し込んでくる。無数の建物の照明が宝石のように散らばっているような景色が、眼前に広がっていた。
森の上に立ち、障害物もないこのあたりからでは地平線まで見通すことが出来る。周りにほとんど光がないのも一層この景色を美しく魅せているのだろう。
「そういえば、そうそうお前。行く当てはあんのか？」
美しい景色に気を取られていた俺に、おじさんがチラッと視線を向けて訪ねてきた。
「実はな……お、俺、家出してきたんだよなぁ…」
「ふーん………家出、ねぇ」
もちろん嘘だ。だってこの場で俺異世界から転生してきた、とか言えるはずがない。それにしてもその場しのぎの嘘は返って心臓に悪い。実際におじさんは俺を無表情で見つめてくるし、確かに家出くらいで、あんな山奥にいるはずもないからだ。
すると、おじさんは、ふぅっと軽いため息を吐いた後、すぐに視線を前に戻した。
「訳ありっつーなら詮索しないことがルールだ」
行く当てがねぇなら、俺んとこで住み込みで働けばいい、そうおじさんは照れ隠しかなんなのか、こめかみを掻く。「まじで、いいの？」少し感動していると、おじさんが両手を合わせた。
「そうだな。入るんだったら俺んところ飲み屋みたいなことしているんだが案外人気で時間が無くてよ。最低五時間はぶっ続けの立ち往生になるだろうな。それから食器洗って、食材の買い出し、店の戸締りとテーブル拭き、ああ、そうそう休ませてやるから安心しろ。その分キッチリ後で働かせてやるから、それと……」
感動を返せ。
「…まぁ、生きてられるなら…」
謎の究極理論で俺は、おじさんの店で住み込みで働くことに決定した。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
