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二十三話 ページ25

アズールがパン!と手袋越しで叩くと、俺の横から「はぁい」とどこかで聞き覚えのある声が響く。


 嫌な予感がしたと同時に身体に謎の浮遊感が襲う。

 目を開くと目の前には俺を俵抱きに持ち上げるフロイドと言われる、おそらく俺を失神させた現況がヘラヘラと笑っていた。


「ああ!またお前かよ!離せよ!!」
「はぁ?こっちは担いであげてる身なんだけどぉー。そんな態度して言いわけぇ〜?」
「ぐっ……」

 
 まともな正論に息詰まると「ほら、舌噛むから口閉じてて〜」と呑気な声が聞こえてくると同時にまたもや謎の浮遊感に襲われる。


「ひっ」


 風が前からやってくる。何かと思えば、フロイドが俺を担いでもの凄い速さでどこかに向かって駆けていた。
 
 多分、アズールさんがいっていたオクタヴィネルに向かっていると思うのだが、フロイドはかなりの酔いとして知られている俺の気もしらないで、身体が四十五度傾くような態勢でカーブを曲がったり、急加速と急減速を繰り返し、俺は脳裏にこれまでの人生が走馬灯のように浮かぶのを感じながら、こみ上げてくる吐き気を必死にこらえ続けた。


「はい、到着〜」


 やがて止まった先でフロイドがどこか爽快感を覚えた表情で言う。


「えー?どーしたの?体調悪いの?」
「酔ったよ!そりゃあ思いっきりな!!」


 恐怖で目元に涙を込めて睨むと「はいはい、うるさい」とまたもやガバッとフロイドは俺を雑に担いだ。それがとどめを刺したのか、俺の口から大量の胃酸が出てくる。ぎょっと俺の方をみたフロイドは、「ええ、ガチじゃん」と面倒ごとのように首元をボリボリとかいた。
 罪悪感が来るのと同時に、フロイドは今度は丁寧に俺を担ぐとすぐにその場から去った。



「すまん……」
「いーよ。まぁ、俺が一応悪いしね。体調悪いんでしょ?アズールがなんか空き部屋あるからそこ使えってさー。あ、後処理はついでに俺がやっとくから心配しなくていいよぉ」


 
 俺のことを思ってなのか、ぐったりした俺を担ぎながら、空き部屋の前まで来るとガン!とフロイドはドアを蹴って部屋を空ける。おいおい、壊れるんじゃねぇのか。と思うが、そのあとは乱暴にベット投げ飛ばされた。次の瞬間、みずおちにベットの角があたり、ぐふっというくぐもった声が漏れた。


「あ、ごめぇーん」


 わびるきもなく若干笑いながら言うフロイドに一瞬殺意が芽生えるが、彼なりの優しさゆえか何故かその日は思いのほかぐっすり眠れた。

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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです!!!!!! (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです! (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねっとり | 作成日時:2022年1月20日 16時

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