*マフィン 【あなたside】 ページ9
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「阿伏兎さん……かぁ……
ちょっと、かっこよかったかも」
助けた人が帰っていき、去り際に聞いた名前を、そっと呟いた。
「あっ、着物乾いたかな」
洗濯してからしばらく経ったから、確認しようと立ち上がるも、頑張りすぎたのか立ちくらみか、ふらっと机に手をついた拍子に、変にしたのか右手首に激痛が。
「いっ……」
久しぶりに捻った痛みに、動きが止まった私だったけど、我に返って洗濯物を取り込むと、乾いていることを確認して、鞄を持って家を出た。
甘味処で働き出してから、通りを歩く度に声をかけられて、私的にはありがたいんだけど、兄はあまりよく思ってくれてなくて……まぁ、攘夷志士だからだと、私は思ってる。
今日も今日とて、賑やかなかぶき町を歩く中、相変わらずジンジンと痛みがくる手首を庇いながら、真選組屯所に到着すると、ブンブンと音が聞こえた。
「…あ、やっぱり。退くんだ」
まさかとは思っていたけど、やっぱり……
仕事をサボって、ミントンの素振りをやっている監察方の、あんぱん大好き退くん。
彼も私の姿を見ると、素振りをやめて驚いたように近寄ってきた。
「Aさん、こんにちは。どうされたんです?」
「ちょっと、返すものがあってね。
近藤さん、いる?」
「あ〜……」
近藤さんの名前を出すと、途端に目が泳ぎ出す退くんに、何かあったなと感じた私は、困ったように笑みを浮かべた。
「もしかして、妙ちゃん?」
「まぁ……はい……
朝から、1発やられまして……」
「相変わらずだね、近藤さん笑」
「でも、呼んできますね!上がってください!」
外にいるのもあれだからと、屯所内に上がらせてくれた彼に感謝して、通された部屋で待っていると、二人分の足音と共に、部屋に入ってきた人達が。
「こんにちは、近藤さん、土方さん」
入ってきたのは、右頬を赤く腫らして湿布を貼っている近藤さんと、煙草をくわえて目付きが鋭い土方さん。
「いやぁ〜、Aちゃん昨日ぶりだね」
「はい。今日は、着物をお返ししようと思って……」
そう言って、着物と少しばかりの菓子折りが入った紙袋を差し出した。
「少しばかりですけど、マフィンを作ったので、皆さんで召し上がってください」
「いやぁ〜、いつもすまないね。作るの大変だっただろ」
「いえ、楽しかったですし、大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
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rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時