*簪 【銀時side】 ページ49
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「A姉〜っ!!おっはようアル!!」
「おはよう、神楽ちゃん。」
三日後。
ヅラも無事退院し、今は元気よく真選組と鬼ごっこ。
Aも、少しは熱が下がり、前みたいにはいかないが、あの笑顔を少しだけ見せていた。
新八が作った卵がゆを食べるため、起き上がった彼女は、寝巻き用の着物の上から、Aの家から持ってきたブランケットを肩にかけ、お妙がキャッキャッ言って結った、緩くポニーテールにし、それを横に流した髪の毛で神楽が遊んでいた。
まだ、顔色が悪い所を除けば、2週間前よりかは随分と元気が出てきた気がする。
「Aさん、卵がゆ出来ましたよ」
「新八くん、ありがとね、作って貰っちゃって……」
「いえ、全然大丈夫です」
「姉御が作ると、全部ブラックマターが出来ちゃうネ」
「あれは食えたもんじゃねェ」
「あはは、たしかに。
神楽ちゃん、布団干すから手伝ってくれる?」
「しょうがないから、手伝ってやるアル」
2人がいなくなり、Aと俺だけになった部屋は、食器がぶつかる音だけが響いていた。
すると、目を伏せて小さく呟いた。
「……傘、取りに来たんだね」
「えっ……あ、あぁ、まぁな。今日の夜中に。」
「……阿伏兎さん、何か言ってた?」
「……なんで?」
「いや……何か言ってたかなぁ、って。
でも、何も言われてなかったらいいの、大丈夫」
そう言って、再び卵がゆを食べ始めたA。だが、蓮華を持つ手は、微かに震えていて、肩も小さく震わせていた。
「初恋相手……じゃなかったのかなぁ……」
「A……」
「好き、なんだ……好きで好きで、しょうがない……
阿伏兎さんのことを、考えると、すっごく胸が苦しくなる。」
あいつの為を想って泣くその姿が、不覚にも綺麗だと思った俺は、懐から細長い箱を取り出した。
「これ、お前に渡しておく」
「……これは?」
「今日託していきやがった。
次に、地球に来た時に、伝えたいことがあるから、それを持って待っててくれって」
「っ……これ……私が……あの時あげた、簪……」
「だから、あいつが帰ってくるまで、持っててやれよ。」
大事そうに簪を撫でるAの姿に、俺もふっと笑うと、それを胸に当ててこっちを見た。
「銀時……」
「あぁん?」
「ありがとう」
「っ……んな事、気にすんな。」
俺に向けられた笑顔は、涙で濡れていたけれど、すごく綺麗な笑顔だった。
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rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時