*生意気 ページ47
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「初恋相手……Aも覚えていないんですって。」
「はぁ?」
何となく知っているような素振りを見せたお妙に、思わずジャンプを閉じた。
「むかし……通っていた先生に頼まれて、桂さんと2人、おつかいに行ったそうなんです。
そこで、迷子になった所を、大きな番傘……そこにある傘ぐらいをさして、助けてくれたそうなんです。
怪我の手当てもしてもらったみたいで、幼かったAさんにとっては、とっても記憶に残るものらしくて……
でも、傘で見えなかったのか、助けてくれた人の顔までは、覚えていないんですって。
それ以来、Aさんの初恋相手になって……大人になったら、お礼がしたいって。」
お妙の話を聞いているうちに、ある事を思い出し始めた。
それは、まだ俺が小さい頃。
松陽先生におつかいを頼まれたヅラとA。
俺と高杉が、あの二人を待っていると、泣きそうな顔で戻ったヅラ。
傍で帰ってくるのを待っていた、松陽先生は飛び付いてきたヅラを抱き留めた。
「小太郎。どうしましたか?Aは?」
「い、いなくなっちゃって……」
「居なくなっただァ?おい!ヅラ、どういう事だよ」
「人が沢山いたから、手を繋いでたんだ。でも、人混みに押されて、いつの間にか……
どうしよう……先生……っ!!Aが……悪い奴に捕まってるなんてなったら……」
「小太郎、落ち着きなさい。先生が探してきましょう。
どの辺で、居なくなったことに気付きましたか?」
なんてやり取りをしている最中、高杉が小さくあっ!と声を上げて、指さした。
その方向に目をやると、涙目のAが傘をさした男に抱きかかえられて、こっちに向かってくるのが見えた。
そして、俺たちの前に着くと、Aをそっと下ろし、あいつは涙をボロボロと零しながら、ヅラに抱きついた。
「ありがとうございました。Aを連れてきて下さって」
「気にすんな。
じゃあ、俺ァ急いでるんでな。先に行く」
素っ気なく俺たちに背を向けて行ったあいつ。
「にぃに〜っ!!ありがとっっ!!」
Aの声に、片手をあげていなくなった、幼いながらに思った、
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rikohuku0428(プロフ) - 続きのパスワードが知りたいです!面白いのでぜひお願いします! (2020年11月23日 0時) (レス) id: 4dacac16ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どこかのムスメ | 作成日時:2018年8月23日 12時