準優勝 ページ1
いつもより念入りなアップの後、徹率いる青葉城西バレー部は決勝戦、白鳥沢学園に挑む。
高鳴る胸を抑えるようにゆっくりと深呼吸をする。
マネージャーなのに選手より緊張していてどうするんだ…
…結果から言えば、青城は負けた。
それもストレートで。
うちは平均値で言えば県内トップ。
そう言われてきたし、実際そうだろう。
でも、若利さんのあの圧倒的なパワーを前にしてしまえば…
練習も、経験も、策略も
全てねじ伏せられてしまう。
強固だと信じてきた今まで積み重ねてきたものも、若利さんには脆い微々たるものだと、そう言い放たれた気がした。
及川「まあ、勝利までの過程なんて関係ないよね。
コートにボールを落とした方が負け。それが全て。」
25点で勝たれたことが悔しいのか、そう言う徹の表情には覇気がない。
へらりと上面だけの笑みを浮かべて負の感情を押さえつけている。
涙を浮かべる勇ちゃんに、普段は表情を変えない国見ちゃん。
マッキーは頻りにスポドリを飲んで、まっつんはタオルで頭を覆っていた。
平均値では白鳥沢に勝っても、掛け算をした積では…
岩泉「さて、飯でも食いにくか」
唯一表情を崩さないはじめはパンと一回手をうってそう言った。
ぽかんとする彼らを更衣室から引っ張り出すはじめ。
自由参加のため一緒に来たのはスタメンの6人にリベロの渡っち、そして控えセッターのしげちゃんと私達マネージャー。
向かったのは部活後によく来ていた中華。
麺類が美味しいこのお店はボリュームも大きく、お腹をすかせた男子高校生にはうってつけ。
いつもとは違い悔しそうな表情をしていたのだろうか、店主のおじさんがサービスで大皿の餃子を2つテーブルに並べた。
頭に染みるような冷たさのレモンスカッシュを口にする。
いつもと変わらない美味しいご飯を口にしてはすすり泣くような声に胸が痛い。
私はここで泣く資格なんてない。
辛いのは選手の彼等で、マネージャーの私は彼等をサポートする立場なのだから。
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作者名:あやにゃん | 作成日時:2019年4月16日 0時