参拾話 ページ31
貴方side
背中の赤黒い数字は参から弐へと変化していた。
きっともう助からない。
これは血気術をかけられたとき、既に諦めていた。
むしろこの短期間でたくさんの受け止めきれない愛を貰えて幸せだった。
「もう満足だなぁ………」
「何が満足なの？」
振り向けばそこには無一郎くんが立っていた。
「無一郎くん！任務終わり？……まさか怪我したの！？」
「違うよ。それより満足って何が？」
「あぁ……もう死ぬことに未練も悔いもないかなぁてことかな。」
「Aさんがなくても僕にはあるんだけど。」
すると無一郎くんはとなりに座って持っていた饅頭を一緒に食べようとすすめてくる。
お礼をいいながら饅頭を受け取り二人でそれを口に頬張る。
「僕、まだAさんと稽古したいしふろふき大根一緒に食べたいし作って欲しい。甘味処巡りや花畑も連れていってくれるって約束した。」
「その約束覚えてたんだね。」
「何故かAさんとのことは記憶に残るんだ。」
「約束破ってごめんね。」
「許すから死なないでよ……」
饅頭を食べる手が止まる。
まさか無一郎くんがこんなことを言うと思わなかった。
「それは約束できないかな。始めに言ったでしょ？鬼殺隊で生きることに保証は出来ないって。」
「でも不死川さんに交わるまで死なないって言ってた。」
「………あれはそのぉ……ほら、保証じゃなくて願望みたいなものだよ……」
苦し紛れに言い訳するも無一郎くんは冷たい視線を私に向ける。君私の元継子だよね？
師匠の立つ瀬がない………
「まだ一緒に居たい。記憶を戻すの手伝うって言った。まだ僕記憶が戻ってないから死んじゃだめだよ………」
ぎゅっと力強くお腹に手をまわして抱きつく無一郎くんは凄く愛らしい。
というか私、全然彼との約束守れてない………
「大丈夫。いつか必ず君を救う人が現れるから。無一郎くんは今まで沢山の人を助けたでしょ？だからそれはいつか巡り巡って君に返ってくるからです」
「やだ。Aさんがいい。」
「今日は随分と甘えん坊だね。」
無一郎くんと喋って生きたいと思っちゃったよ………
君と花畑に行きたいし、記憶の戻った君も見たい。
でもそれは叶わない。
「あと２日………」
―――――――――少しだけ未練ができた。
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るる - 読んでて勝手に涙が出るくらい素敵な作品です。涙が止まりません… (2022年8月25日 23時) (
レス) @page45 id: a731806c24 (このIDを非表示/違反報告)
零流 - 涙が止まらないです… (2020年5月28日 11時) (レス) id: 5357f72739 (このIDを非表示/違反報告)
舞 - 色んな作品を毎回楽しませてもらってます！本当にお上手ですね！今回は悲しくて涙が出てしまいました…他の作品も楽しみにしています！ (2020年4月4日 1時) (レス) id: 536eb77c6b (このIDを非表示/違反報告)
遥 - いいお話です。涙が出ました‥ (2020年3月26日 11時) (レス) id: 89c9ae8a6f (このIDを非表示/違反報告)
なななななな - 今年初めてガチ泣きしました… (2020年3月2日 11時) (レス) id: 967fb8e362 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：AOI 3
| 作成日時：2019年9月21日 14時
