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(白石)
患者をつれて戻った時、Aは待ってましたと言わんばかりにモニターを確認した。
冴島さんが彼女に報告する。
「血圧下がってます」
「輸血急ぐ!このままだと心停止するよ」
「はい!」
凛々しい声からは、雰囲気からは、普段感じるゆったりさは全く感じない。
海外経験で積まれた、他にはない判断力の早さと、卓越した技術。
久方ぶりに見る、“医師”としての香坂Aが、そこにいた────。
「頸動脈、弱いです…」
「横峯さん、ラインもう1本取って」
「はい」
私が瞳孔を確認しようとしたら、もうそこにはAが立ってるもんだから、こちらが何を考えているのか完璧に先読みしている。
「瞳孔不同…脳外に連絡して。
それと他のみんなは…」
「はい!」
名取くんが脳外に連絡を取ってる間、モニターのランプが点滅しだした。
Aが顔をしかめて指示を飛ばす。
「来た…急いで開胸の準備!」
「はいっ!」
どうやら予想より早かったらしい。
顔を歪めつつ、Aは手術服に身を包む。
その動作でさえ、どこにも無駄がなくて。
いざ開胸してみると、そこはまさしく血の海だった。
Aは躊躇うことなくその中に小さな手を突っ込んで、手当たるところすべての出血弁を探す。
私はその隣で溢れる血液を救っているけど、多すぎてこれじゃ間に合わない。
「緋山先生呼びましょうか」
「いや、角度変えてみる。
吸引して」
「はい…!」
冴島さんの提案に低く唸ったAは、真っ赤な手を翻す。
と、その手がぴたりと止まった。
「この奥…」
「────今日はよく呼ばれるな」
ドアが開いて入ってきたのは、藍沢先生だった。
彼は患者の瞳孔を確認し始める。
そこにAが助言を出す。
「瞳孔不同は恐らく末梢性」
「ああ。
腹の止血が済んだらCT撮ってくれ。
もう1度そこで診察する」
「OK.いま探ってる。
FFIの血液、FPに変えて」
「血圧落ちてます!」
Aがモニターに視線を飛ばす。
「香坂先生、変わるよ」
「いま右手離したら大洪水だから、ちょっと厳しい。
私の手じゃ出血の範囲が広すぎてカバー出来ないから、誰か胸管引っ張って」
────まずい。
いま下手にAを退かすわけにもいかないし、このまま待ってても血圧が下がって心停止だ。
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恵李 - こんにちは。恵李です。1年前からほとんど毎日見てます!続編よろしくお願いします!あの〜質問questionなんですけど、何歳ですか?私は華のJK16歳ですけど教えてください!! (2022年10月19日 22時) (レス) @page10 id: 18a46fedc8 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - ayanelさん» こんにちは… (2021年9月10日 11時) (レス) id: 9a04ef101c (このIDを非表示/違反報告)
レー - 質問というか聞いていいですか? (2021年3月8日 22時) (レス) id: 88b0f39677 (このIDを非表示/違反報告)
フラ - 作品を参考にしてよろしいですか?? (2020年9月11日 22時) (レス) id: ead1db5ef4 (このIDを非表示/違反報告)
あゆか(プロフ) - とても作品内容は面白く読ませて頂きました。一言申し上げるとセリフの前に名前を書いていただけると誰のセリフだか分かりやすくてもっと良い作品になると思います。素敵な小説ありがとうございました。 (2019年12月31日 0時) (レス) id: 8f8d498a5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月25日 21時