織田作にドッキリとか絶対無理じゃね？ と思った今日この頃。【黒の時代】

次回は続編！！ ページ49

この後、安吾さんは恐らくミミックの奴等に捕らわれ織田作さんはそれを追い掛ける。そしてミミックの長、ジイドと決闘し、死亡。


──死亡か。


……如何やってか、織田作さんを助ける方法はないものか。出来れば子供たちと、定食屋の親父さんも。助けられる人が増えるのは文句ないし、それに何より、自分が知っている人物が死ぬ未来をそのまま甘受できる訳がなかった。

そんな物思いに耽っていたのだが、不意に太宰さんの「ね、凪ちゃんも撮りたいでしょう？」という言葉に現実に引き戻される。思考が少し止まったが、彼が呆れたように「だから、写真」と繰り返される。


良いんじゃないですか、なんて当たり障りのない言葉を返せば、安吾さんが苦笑を漏らして「幹部殿の仰せのままに」と言った。太宰さんも笑いながら、このアングルが男前に撮れるとスツールに足を乗せ体を傾ける。何となくムカついたので私が撮ってみればやっぱりイケメンだった。



ぐぅうと歯噛みしている私に向けて、今度は太宰さんがシャッターを切った。ぽかんとしている私がカメラに写っている。

お世辞にも綺麗ではないその姿に『えぇ』と文句を述べる。だけど彼は愉快そうに笑うだけだった。



「太宰、何故急に写真なんだ？」

「今撮っておかないと、我々がこうやって集まったという事実を残すものが何もなくなるような気がしたんだよ。何となくね」



私はその言葉に、少しどきんとした。

このまま台本(ストーリー)通りに進んで行ったら、織田作さんは死ぬことになる。この四人で、他愛ない話をすることもなくなる。私が──私がどうなるかなんてのは判らないけれど、それでもこの三人の末路は理解している。



「……凪ちゃん？」



突如として太宰さんが話し掛けて来た。私は少し吃驚したものの、何でもないですよと言った。

けれど彼は、ふっと儚げな笑みを浮かべるばかりだ。目を瞬かせる私に、彼は言った。




「……凪ちゃん。──私はね、君の、やりたい事をやれて、言える処。大好きだよ」




太宰さんが云った瞬間、胸の中にあったしこりの様なものがとれた。浄化されるみたいに、それが体の奥深くに落ちて消えるように。波紋のように広がったそれが、私をゆるりと納得させた。


そうか──私は私の、やりたいようにやればいいのか。




『……はい。ありがとう御座います』








織田作さんは、死なせない──絶対に。

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