織田作にドッキリとか絶対無理じゃね？ と思った今日この頃。【黒の時代】

二人目の神が存在した ページ14

『……太宰さん。私が何を云いたいか、分かりますね？』

「えー、分かんなぐえっ、ちょっ、凪ちゃんギブ」



最後まで云わせず、太宰さんの首を絞めながら揺すった。



『貴方は、一体、何が、したいん、ですか！ 此れ中也さんにも云ってましたよね、とんでもなく強いんじゃ無い！ 真逆！ とんでもなく弱いの！』



太宰さんと歩いている時に、妙に感じた好奇の視線の源流はこれか、と判明したことに崩れ落ちたくなる。もはや太宰さんを責める気にもなれずに、頭を抱え込んだ。

合点はいったが、驚くほど嬉しくない。意味のない呻き声をあげる私に、織田作さんが「大丈夫か」と心配そうに声を掛けてくれた。そう見えますかなんてヤケ気味に云うと、彼は少し考えこんでから「見えない」と答えた。あ〜天然なんですね了解です〜……。


二十歳を過ぎた大人といえど、此処まで盛大にボケられると可愛く見えるものだなと思った。未成年の感想じゃねえわコレ。



そんな処に、「今日は随分と賑やかですね、織田作さん、太宰君」と呆れたような声がかかった。幸せ過ぎて死ねるかもしれない。太宰さんが声がした方を見て、嬉しそうに「安吾！」と呼びかけた。安吾さんは片手を掲げて返事の代わりとした。



「すみませんが……、そちらの方は」

『初めまして、えーと……、暁凪です。太宰幹部の補佐をやっています』



ああ、君が噂の、と安吾さんが云った。くそ、此処まで広がってやがる。

手を差し出して「情報員の坂口安吾です。其方の二人とは友人でして、太宰君のこともよく知っていますよ。宜しくお願いします、暁さん」と云った彼をじっと見つめる。



「な、何です？」

『いや、初めて最初から名字で呼んでくれる人を見ました』

「……、は？」



彼は一度呆然とした後、ジロッと太宰さんと織田作さんを睨んだ。太宰さんはどこ吹く風、織田作さんは戸惑う様に「名前で呼ばれるのは嫌だったか」と訊ねてきた。



『あああ全然違います、寧ろ織田作さんはウェルカムです！ まぁ太宰さんはアレですが』

「ねぇ私の扱いだけ酷いと思う」



一応この中で一番偉いのだけれど、と太宰さんは口唇を尖らせる。太宰さんはな、ちょっと性格が残念だからなぁ。



「……結局僕は、どう呼べば……」

『どちらでも……！』

「じゃあ──皆さんお名前で呼んでいるようなので、凪さんで」



笑ってくれた二人の新しい友人と他愛もない話をした。多分この日が、一生のうち、一番楽しい日だと思えた。

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