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コツ、コツ、と足音が誰も居ない廊下に響き渡る。

赤司君が前方を歩き、私は其れに無言で着いて行った。

ドリブルをつく音が、段々と遠ざかっていた。


…………私は、何処へ向かおうとして居るのだろうか。


彼は何も言わず、私は何も言えず。


むんむんと感情が渦巻くのに耐えられなくて、口を僅かに開いた。




「あ、赤司君!」




静かな空間を、自分の声で破るのは些か心地良く無かったが。





「__何だ」





ぴたり。

彼は歩くのを止め、ゆっくりと振り返る。

ぐっ、と息を飲み込んで覚悟を決めた。






「採用理由を、教えて下さい」
「採用理由」







艶やかな声で鸚鵡返し。





「そうだね」





ゆったりと、時間が流れる。
彼の一言一言に支配されている空間は、不思議と嫌では無かった。





「君には、とある仕事をして欲しくてね」

「……?」





赤司君の口から述べられたのは、成る程誰から聞いたのか私以外に該当する人物は居なさそうな理由であった。


自意識過剰では無くて。


親の仕事柄ノウハウは心得ているし、知識が無ければ逆に悪化するような。





「私の家の事、知ってるんだね」

「あぁ。でなければ練習の邪魔をした一年の女子生徒等歓迎しない」

「お邪魔しました、ごめんね」

「発端は千尋だからな、君だけを咎めたりはしないが」





部室に着き、資料を手渡される。

未だに躊躇う私に、彼は『中学時代の事も全て知っている』とトドメを刺す。驚く私に、彼は以前に調べた事だからすっかり忘れていたよと苦笑する。

過去を知って尚採用したいと告げられ、私は白旗を上げるしか無かった。








「では、頼めるかい?」

「勿論、期待は裏切りません」








少しだけ、泣きそうになっていたかもしれない。
だって、嬉しいから。


『御苦労だった』という労いの言葉だけで、本当に彼が全てを知っていると分かったから。時を越えた理解者に、今迄一切関係が無かったのにも関わらず、救われた気がした。


初めは赤司君の意図が分からなかったけれど、今なら感謝出来る。






____こうして、私の全く新しい日々が始まったのであった。

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nome(プロフ) - 律。さん» コメントありがとうございました!赤司君と絡むのが遅くてすみませんm(_ _)m頑張ります。 (2015年6月16日 20時) (レス) id: 6a7654f1e9 (このIDを非表示/違反報告)
律。 - はじめまして。赤司君とこれからどう関わっていくのか楽しみです。更新無理せず頑張ってください!! (2015年6月14日 17時) (レス) id: f3d528ae0e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nome | 作成日時:2015年3月31日 20時

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