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「……………………は、」







思わず漏れた声に気付いた様に、其の人物は此方を振り向いた。









「……………………誰アンタ」









パイプ椅子に腰掛けた人物は、虚ろな目で私を見つめている。









「い、ち年、南A、です」








良し。良く言えた私。

上履きの色からして、相手が三年生だと言う事が伺える。

上級生相手に、咄嗟に声が出た自分に若干の感動を覚えながら、私は取り敢えず扉を閉めた。



「久しぶりに来たら、綺麗に成ってたのはアンタがやったの?」
「は、はい」



此処に通い続けて二週間。
私は、暇を見つけては此の部屋を掃除して居た。とは言っても、軽くだが。


パタン、と彼は持っていた文庫本を静かに閉じる。
座れば、と視線を向けられたので素直に隣に腰掛けた。




…………近い。




「で、誰に此処聞いた?」
「えっと…………」




はる兄、と思わず答えそうになり口を噤む。

先輩は三年生だから、もしかしたら知っているかもしれない。
はる兄が三年生の時、彼は一年生だった筈だから。

だから、正直に話す事にした。





「木津川晴矢に、です」





「………………!?」





相手の顔色を伺いながらもきっぱりとはる兄の名前を告げると、先輩は口を開けたまま動かなくなった。

やっとのことで言葉を絞り出しながら、彼は問う。先程よりも、生力の有る目で。





「…………名前、何だっけ」
「南Aです」
「木津川先輩の何?」
「従兄弟です」





…………そう、と呟いたっきり先輩は話すのを止めた。
元々饒舌では無いらしい。



「先輩、は……?」



気まずい雰囲気の中、辛うじて私が発した言葉は其れだけだった。

初対面の方に其れはどうだよ、と思うが言ってしまったものは仕方がない。

無視される事も危惧したが、其の心配は無用だったらしい。

ゆっくりと、体育館のドリブルの音に紛れながら、言葉が聞こえる。









「…………俺、元バスケ部だったから」

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nome(プロフ) - 律。さん» コメントありがとうございました!赤司君と絡むのが遅くてすみませんm(_ _)m頑張ります。 (2015年6月16日 20時) (レス) id: 6a7654f1e9 (このIDを非表示/違反報告)
律。 - はじめまして。赤司君とこれからどう関わっていくのか楽しみです。更新無理せず頑張ってください!! (2015年6月14日 17時) (レス) id: f3d528ae0e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:nome | 作成日時:2015年3月31日 20時

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