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「ああ、あるよ。新一が生まれてすぐの頃だから…確かAが九才の頃だったな。
ロンドンにある老舗のホテルでね。以前僕がそのホテルを舞台にシャーロックホームズのパロディめいた作品を書いたことがあって、有難いことにその本をホテルのオーナーが大層気に入ってくれてね。
僕が舞台にしたホテルの一室の部屋番号を、「２２１Ｂ」に変えてくれたんだ。粋な計らいが嬉しくてね……仕事の都合でロンドンに行くときは、いつもその部屋にわざわざ泊まっていたな」
「なるほど……そのとき、なにか変わった事件は？」
「遠回りな探りの入れ方はやめたまえ。検討はついているんだろう？」
朗らかな笑い声が聞こえてくる。かなわんな、と苦笑した。
「では伺います……その夜、ホテルに泊まった夜という意味ですが……Aがホテルを抜け出して行方不明になりませんでしたか？」
「んー、どうだろう……ああ、そんなこともあったなあ」
優作の柔らかい声に、じょじょに体が蝕まれていくような寒気を感じた。
まずいな、と思う。
確実に俺の推理を裏付ける証拠がそろいつつある。
「でも大事には至らなかったよ」
「部屋を抜け出してさまよっていたAを、有希子さんが見つけたから、ですね？」
「そうそう。あの時、一瞬だけ僕も有希子も旧友に会いに、ホテルのエントランスに出ていてね……僕たちが部屋を留守にしている間に、寝ぼけて部屋を出たんだろうな」
と、思うしかなかったよ。
優作の付け足された一言に俺は息をのむ。
思うしか、なかった。Aが寝ぼけていると、思うしかなかった。
「どういうことです？」
「遠回りな詮索はやめなさいと言ったはずだが」
「………失礼しました。私の考えを話しても？」
もちろん、とまた朗らかな笑い声がする。
なぜだが急に恐ろしくなった。この質問の答えがイエスなら、俺の推理は確実に正解へと近づきつつあるということだ。
俺は息を吸い込む。
「Aが名前を呼んでも返事をしなかったから、ですか」
「congratulation」
目を閉じる。深く息を吐きだした。
パズルのピースがはまりだし、歯車が動き出している。ひどく歪な音をたてながら。
「……質問を続けても？」
「むろん。今宵は長い夜になりそうだ」
ええ、と相槌をうった俺の声は、自分でも驚くほど小さく震えていた。
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海星(プロフ) - カラ松ガールさん» ありがとうございますっ…！ めちゃくちゃ嬉しいです！！ 頑張ります！ (2019年10月31日 7時) (
レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - 前回からここまで一気読みしました！神ってました！大好きです！ (2019年10月30日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 74話に誤字がありました。「有紀子」ではなく、「有希子」です。 (2019年10月28日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
海星(プロフ) - 架印�靴気�» わわわ！ ほんとですね！ お恥ずかしい…ご指摘ありがとうございますっ！ (2019年10月26日 10時) (レス) id: 9bd37337b9 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 66話：「このタケシード姿、なかなかいいな」の所…。“タキシード”が“タケシード”になってますよ。 (2019年10月26日 0時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海星
| 作成日時：2019年10月18日 9時
