検索窓
今日:5 hit、昨日:31 hit、合計:88,663 hit

47 ページ45

.
side沖田





携帯を閉じた後のことなら、

今、きちんとはっきり思い出せる。




突然目覚めたみたいに意識がはっきりして、

汗だくで走ってくる近藤さんが見えて、


でも、間に合わなかった。





涙が出ない自分にも、気づかなかった。




悲しい時には涙が出るってことすら、忘れてた。




悲しくなかったわけじゃないのに、

なぜだか俺の視界はずっとはっきり。





近藤さんの涙を見て、

ようやく、涙、というものが何なのか思い出して、

けどやっぱり冷静なまま。





魂を病院に置いたまま、

アパートの近くのマックで、俺の今の体みたいに空っぽのマックシェイクを、

ひたすら吸い続ける。




近藤さんは先に帰ってしまった。

気づかいなんだと思う。

そんな気遣いなんていりやせんぜ、と言いたかったけど、

拒めなかった。







悲しいはずなのに感情たちはどこかへ置いてきてしまった。

ここには魂も感情も、マックシェイクもない。



なのに、というか、だから動けない。



そろそろ帰らないと。

けど、動けない。



ずっと店内に居座ってちゃ怒られる。







___「ずっと居座ってたら追い出されるよ?」





見慣れた制服で、マックシェイクとバニラアイスを両手に持って立っていた、A。





「今度ちゃんとお金返してね、じゃ。」




マックシェイクを俺の眼の前に置いて、

当たり前のように去っていく。




そうか、こいつがいる世界でも、時間は経っていたんだ。

俺たちがあんな状況にいる中でも、こいつは当たり前のように部活して、風呂入って寝て、また部活してたのか。




『___おい。』




腹が立ちそうなもんなのに、立たない。

むしろ___




『座れ、っつったらどうすんでィ。』




すごく、安心する。




「……まあ外じゃアイス溶けるし。

暑いし、疲れたし、店内でお召し上がりになろうかな。」





『……一口くれィ。』




「は?あんたにはマックシェイク買ってあげたでしょうが。」






”は?やだよこれ私のだもん。”




あの病院で、どんなに重い空気を吸って出てきても、

それを引きずり続けても、こいつの周りの空気は、


チャーハン食って喧嘩した時と同じだ。




あの時はむかついたこの顔も、

今は見ると目が熱い。





「わ、もう溶けそう。」



こいつはマックシェイクと一緒に、

感情も、魂も持ってきてくれた。







.

続編!→←46



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (31 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
124人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 沖田総悟 , 学パロ   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ニコ | 作成日時:2020年4月3日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。