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side沖田
そこからは、今までの時間の流れが嘘みたいに、
時が早く進んでいった。
大好きな姉上のお顔を、ガラス越しに見つめながら、
その顔を脳に焼き付けて、一生手放したくないのに、
掴んでも掴んでも、指の間から零れ落ちていくような。
俺がこんな遠い高校になんて来ていなければ、容体が悪くなったことにも気づいて、
きちんとそばで支えて、手術もちゃんと間に合って、
もっと穏やかで。
「総ちゃん、
私は大丈夫だから、総ちゃんは剣道を頑張ってね。
あの人たちに、迷惑かけちゃダメよ。」
俺が部屋に入るなり、優しい、なのに弱々しい瞳で言った言葉。
なんで、こんな時にも姉として俺に接するんですか。
一人の人間として、死をわかりやすく、拒んで欲しい。
けど、姉上を、姉にしてるのは、弟である俺だ。
姉上を、少なくとも女にできるのは、あいつしかいない。
____知らせないと。
頭では、わかっているつもりだった。
なのに、心臓の鼓動が邪魔して、毎日使い慣らしてる携帯が、うまく使えない。
呼んだら来るのか。
わからない。俺には何も。
あいつが遠い高校に行くことになった時、二人の間で何があったのか。
なぜ姉上は二人のお見送りをしなかったのか。
俺は姉上の、姉としての顔しか知らない。
もう真夜中だ。寝てるかもしれない。
けど、来て欲しい。
二人にまた、会って欲しい。
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作者名:ニコ | 作成日時:2020年4月3日 10時