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sideA
『あれ、沖田今日早いじゃん。』
いつも通りの朝。
ここ何週間かはすごく平和で、
特に変わったこともなくて、逆にそれが怖いくらいだった。
嵐の前の静けさ、っていうのだろうか。
期末テストという大きな行事があったのに、
何の事件も起きず、私は予想通り酷い点を取った。
今日もいつも通りの朝練。
私が約束の時間ギリギリにアパートの下に着き、
約束の時間を少し過ぎてから、まだ寝ぼけた顔した沖田を近藤さんと土方さんが引ずって出てくる。はず。
でも、今日はなぜだか沖田一人。
「行くぞ。」
『え?』
え、ちょっと。
一人で歩き出しちゃったよ。
『土方さんはともかく、近藤さんは?』
「……」
喧嘩でも、したのかな。
『……宿題やった?数学の。
あれめっちゃ時間かかった。』
「やってねェよ、ンなモン。」
『やれよ。』
「アンタはやってもやらなくても、
頭ん中おがくずだらけなのに変わりねェだろィ。」
『砂糖とか塩とか、もっと実用的なものにしてくれない?』
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普段通り会話してるように見える、けど、
なんかやっぱり思いつめたような顔してる。
宿題もしてないくせに目の下にクマなんて作っちゃってるし。
私には関係ないけどね。
沖田抜きで、あの上級生二人とかかわることもそんなにないし。
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その後の朝練も、放課後練も、沖田はあの二人とは一言も口をきかなかった。
土方さんにいたずらも仕掛けないし、嬉しそうな顔で「近藤さーん、」とも言わない。
あの二人が沖田に話しかけることもなかった。
近藤さんは時々すごく心配そうな顔をして沖田を見てたけど、すぐに切り替えて、いつもの笑顔で笑ってた。
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「おい、帰るぞ。」
帰りはいつも沖田と2人だから、ここからはきっといつも通り。
他愛ない話して、喧嘩して、笑って。
なのに、やっぱりどこかがいつも通りじゃない。
私じゃなくて、沖田が。
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作者名:ニコ | 作成日時:2020年4月3日 10時