* ページ9
ピーっ、ピーっという機械音とともに私は眠りから覚めた。音の原因はよくドラマとかで見る機械。そこに映されていたのは無慈悲なゼロ。
死んだのか。
理解するのに時間はかからなかった。
体を起こして彼を見た。顔はいつもより白く、握った手は冷たい。雨に晒されたみたいに、冷たい。
ひどく、呆気ない死に方だ。何も言わず、私の頭を撫でて終わりか。
「坂田くん、坂田くん…。ねぇ、返事してよ」
頭に乗せられていた軽い手を握った。
「さかたく…、お願い……。なんで、なんで…っ」
わかっていたことだ。近い内に彼は死に、私の中には虚無だけが渦巻く。そんなの、余命宣告のときからわかってたことでしょ。
目頭が熱くなって、鼻がツンとした。我慢しようとしても、それはすぐに耐えきれずに流れてきた。
私は声を上げて泣いた。
もう坂田くんには届かない。泣かんとって、って慰めてもらえない。
駆けつけた家族やお医者さんを気にせず、ただただ泣き喚いた。
この世の無情さに押し潰されながら。
数日後。坂田くんのお葬式は慎ましく行われた。終わる頃には喪服に染みがたくさん出来ていた。坂田くんが見れば、ケラケラと笑うだろう。
私はその後の夕食には参加せず、一人海に来た。
悲劇のヒロインを演じる気はない。神様に踊らされるのはごめんだ。
そう思って平常心でいたつもりだった。坂田くんに余計な心配をかけさせたくなかった。
でも、やっぱり無理だった。
胸を満たしていた愛は溶けてなくなって、涙だけが溜まって、溢れてくる。
このまま遥か彼方の水平線に向かえば、坂田くんに会えるのだろうか。坂田くんのいない世界で生きるくらいなら、死んだほうがマシなんじゃないか。
そんな思いばかりが、足元をパシャパシャと濡らした。
でもやっぱり、彼を愛してしまった私にはできなくて。
『俺の分まで生きてな』
『笑顔で俺を見送ってや』
『好きなように生きて〜』
『愛してる』
彼の残した言葉が、私の意識ををこの場に引き止める。
「なんてことしてくれたの、ばか」
そんなことを呟いてその場をあとにした。
64人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あゆ(プロフ) - どのお話も切なくて、思わず1話読み終わる事に泣いてました…w最高でした!ありがとうございます…(´;ω;`) (2019年7月25日 21時) (レス) id: e76134e0bd (このIDを非表示/違反報告)
夏々 - まふくん……悲しすぎる(;_;) (2018年11月22日 23時) (レス) id: ca7b93074f (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり - かのこゆりです!天使病のお話を書かせていただきました。お褒めの言葉、ありがとうございます!緊張していたのもあり、正直あまり自信がなかったのですが、そういっていただけて嬉しいです。読んでくださり、本当にありがとうございました! (2018年11月22日 4時) (レス) id: 459f75f8c6 (このIDを非表示/違反報告)
sera(プロフ) - ぬこさん» 坂田さんの小説の作者、seraです。私の書いたものが良かった、と書いてくださったのでコメント返しさせて頂きます。そう言ってくださりありがとうございます。これからも私含め、他の作者様のこと、応援よろしくお願い致します! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 28f01b04a4 (このIDを非表示/違反報告)
ぬこ - 凄く感動しました。特に、坂田さんの入院(?)のやつと、まふまふさんの天使病のやつです。めっちゃ泣きました!これからも頑張ってください! (2018年11月21日 21時) (レス) id: 4fbcbbbe7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ