あの日の恋が嘘みたい。【歌い手】

＊ ページ37

「え」

なんで…。

なんで、僕がこんな病気に…。

ねえ神様、僕なにか悪いことしましたか？

半年で死んじゃうってことは、

「来年、僕とAが出会った日に結婚しよう！」

っていう約束も、

「おじいちゃんおばあちゃんになっても仲良く一緒にいようね。」

っていう約束も、

他のたくさんある約束も、


全部叶えられないってこと…？


やだやだやだやだ！！

ずっと、Aと生きていくって決めたのに。


今まで、何度「死にたい」って思ったか分からないくらいなのに、

今は絶対死にたくない。




羽の成長の仕方には個人差があるらしいんだけど、僕の場合「Aのことを心から考えているとき」に痛い。

…なんで。

こんなの、生き地獄だ。

僕にとって、Aは自分の命よりも大切な存在。

「運命の人」って、この人のことだったんだろうなぁ、って思うくらい。

Aを守るためなら、僕は命を捨ててもいい。

冗談じゃなくて、本気でそう考えていた僕にとっては、Aのことを考えないときはなかった。

Aと出会ってから、いつも僕の心の中にはAがいた。

だから、Aのことを考えないなんて、無理だよ…。


病気が分かってしばらくは、Aが仕事でいない間にずっと泣いてた。

今までの思い出を思い出して、

もうお別れしちゃったら永遠に会えないんだな、っていうことを考えて泣いて、

こうやってAのことを考えるたびにズキズキ痛む羽を恨んで、

ああ、こんなことしてたらもっと寿命が縮んじゃうな、なんて。

最近はもう泣かなくなったけど、ふとしたときに思い出して悲しくなる。



さいごまで、今までと変わらない感じで接してほしい、って思ってるから、


Aにも、そらるさんにも、他の友達にも、


秘密にして、生きていく。


そう決めたんだ。



僕からみんなが、離れていかないように。


ひとりぼっちは、さみしいから。


「A、今どこにいるかな〜。タクシーで空港に向かってるくらいかな。」

作業をしてても、Aのことが気になる。

Aとしばらく会えないなんて、寂しいなー。

さっき見送ったばっかりなのに、もうAの笑顔が見たいとか思っちゃってる僕は、依存しすぎてるのかな？


僕がAにプロポーズした帰り道、二人で撮った写真。

二人とも、本当に幸せそう。

…このときは、本気でいつまでも一緒にいれると思ってたんだよな。

やっぱり、考えてしまう。

なんで、って。

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